第27話 悪霊に立ち向かう(前)

僕は深夜に目を覚ました。最後に時計を見たときには、23:50とかだった気がする。

そして、4時間位は眠ったんだろうと思う。身体が重い。

僕はソファで眠ってしまったようだった。


向こうの方から、声が聴こえる。誰かが喋っているようだった。

だから、僕は目を覚ましたのだ。


沓子。


沓子が誰かと喋っている。こんな時間に、誰と?

沓子の部屋のドアの前に誰かがいる。それは僕が眠っているリビングからも見える。


誰かがいる。沓子は親しげに話している。

暗くてよく見えないが、小さくて、背中の丸まった、老婆だ。


沓子は、ドアを半開きにして、なにか老婆と話しているのだ。

それは、談笑しているような雰囲気に見えた。僕はソファに横になりながらそれを見ていた。


老婆は、遠くから見ると、まるで黒い塊みたいだった。

5分ほど経っただろうか。

老婆は沓子の部屋のドアから離れていった。そして、玄関の方までのそのそと歩いていって、外へ出ていった。閉まるドアの音が、暗闇に響いた。


「こんな時間に、誰なんだい?」と僕は行った。

沓子はものすごい勢いで部屋から出て、僕のところまで駆け寄ってきた。

「知らない!私あんな人知らない!」と沓子は叫んだ。


僕は身体を起こす。

「どういうことだ?」


「あんな人知らない!気づいたら私の部屋のすぐ外でぼそぼそとなにかを話していたの。変な人だと思ったから、刺激しないように、相手に合わせて喋っていただけなの!」

沓子はそう言って僕の手を掴んだ。沓子の手のひらはぐっしょりと湿っていた。


老婆はドアから出ていった、すぐに鍵を閉めなければ。

僕は立ち上がって、ドアの方に向かう。


その瞬間にドアが空いた。ガリガリに痩せ細った老婆が、ドアの隙間から顔をのぞかせた。


暗闇に隠れて、その表情の全てはわからないが、老婆は不気味な笑みを浮かべていた。これは悪霊だ。と僕は確信した。そしてこの悪霊は間違いなく沓子を狙っている。僕は大声を上げる。老婆を威嚇するためだ。「何だオラァ」と叫んだはずだけど、あまりの恐怖でうまく発声ができない。

実際に出てきたのは「アウ...ア...」というか細い声だった。僕は沓子を背中に隠れさせる。沓子はあまりの恐怖で腰が抜けている。老婆はゆっくりとこちらに近づいてくる。

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