三人の偽妹と同居したけど仲良しです!

花林糖

プロローグ

 俺ーー新井悠馬あらいゆうまは一人っ子だ。兄弟はいなし姉妹もいない。

 だが、そんな俺にも幼馴染の女の子が三人いる。いや、もはや幼馴染なんて生温い関係ではない。例えるなら義妹という言葉が近いがそうでもない。

 よって俺が彼女たちを語るなら、それは偽妹にせまいと言うほかない。


 そんな俺と偽妹たちの関係は非常に良好だった。

 互いの家は勝手知ったる我が家であり、『お邪魔します』じゃなくて『ただいま』が正しい。

 毎日のように互いの家で寝泊まりした。

 一緒に遊ぶのは当たり前。

 一緒のご飯は当たり前。

 一緒のお風呂は当たり前。

 一緒に寝るのも当たり前。

 後半二つは流石に小学生までだったが、とにかく何をするにも一緒だった。

 他人から見れば少し異常な関係は、それこそ現在進行で続いている。


 ーーだが。

 そんな俺たちの生活に転機が訪れた。

 俺の両親と偽妹たちの両親が、まさかの海外出張する事となったのだ。

 同じ会社で働いてる訳ではないので本当に偶然。

 しかも偶然は重なるもので、出張期間が年単位という事らしい。

 そこで親たちは話し合った。


 ーーそうだ。子供達を一箇所で生活させれば安心だ!


 話し合いは五分も経たずに終わったという。

 もうホントに即決で、子供の気持ちなどまるで考えていなかった。

 けれど問題はなかった。

 寧ろ今まで何で行ったり来たりする必要があったのか? そんな風に思う始末である。

 だって俺にとって彼女たちは、偽物であると同時に本当の妹なのだ。だから兄としてしっかり振る舞えば良い。


 ーーそして現在。

 俺たち偽兄妹の新生活が始まった。

 拠点となったのは俺の新井家だ。

 なんの問題もないと思っていたのだが、少し問題が起きてしまっていた。


「おにぃおにぃ! 見て見てこれ! おにぃの今日のラッキーアイテムは、愛情のこもった贈り物なんだって! だ・か・ら。これ受け取ってくれたら結婚してくれるよね?」

「にぃに、私からもプレゼント。だから柚空ゆらと結婚して?」

「ダメですよ兄さん! 結婚式場と新婚旅行先は早めに決めるべきなんです。政府の方針の所為で、私と兄さんは来年まで結婚出来ませんけど……。そこをこうして上手く利用しないといけません!」


 とまぁ、もうお分かり頂けただろうが。

 どうやら本当の妹のように思っていたのは俺だけだったようでーー。


「もう何言ってるの? おにぃと結婚するのはボクなんだから」

「にぃには……柚空のお婿さんだよね?」

「二人とも変なこと言わないで下さい。兄さんのお嫁さんに相応しいの私なんですから」


 親が不在なのをいい事に、俺に結婚を迫ってくるようになったのだ!

 タガが外れたのだ。邪魔者がいなくなった今がチャンスとばかりに!


「ねぇおにぃ。ボクがおにぃのお嫁さんだよね?」

「柚空は、にぃにのこと……信じてる……」

「二人は分かっていませんね。兄さんと私は相思相愛なんですから。当然、私がお嫁さんですよね。兄さん♪」

「………………」


 だが分かってくれ偽妹たちよ。

 俺はお前たちのことをーーーー。


「俺はお前たちを妹としか見れないんだっ!」


 しっかりと本心は伝えるのだがーー。


「またまた〜。おにぃは照れ屋さんだね!」


 と、一つ下の偽妹。白井桜空しらいさらは答えて。


「にぃにはにぃにだよ? でも、柚空はにぃにが……大好きなんだよ?」


 と、桜空の双子の妹。白井柚空しらいゆらは語り。


「兄さんったら、まだそんなこと言ってるんですか? 兄さんと私は赤い糸的な運命で結ばれているんですよ?」


 と、同い年の偽妹。銀杏夢奈いちょうゆなが断言する。


「いや照れてないし。俺もお前たちの事は好きだよ妹として。あと夢奈の言ってる事はよく分からない」


 すでに手遅れというか、俺は偽妹たちの兄として失敗したのだろうか?


 ーー否。断じて否だ!

 そうだ今からでも。今からでも本当の兄妹になるんだ。

 そのためにも、今回の事は寧ろ好都合ではないか!


「分かったよ。お前たちの気持ちはよく分かった。なら俺はーー」


 だからここに宣言しよう。

 これからもこの関係を続けるために。


「俺はお前たちの、本当の兄になってみせる!」


 そうして俺は、偽妹たちの本当の兄になることを誓ったのだった。

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