2100年未来の旅

ゆーが

プロローグ

グッドモーニング センダイ ロードトラフィックコントロール

 何もかもが1世紀前で止まっているこの村に不釣り合いな、最新式の自動運転車。

 廃校となった学校の、田舎らしく広大なグランドへ駐車されている4台のそれは、後にたつ、朽ち果てていくいっぽうである校舎のふるさを目立たせてしまう。

 そのうち1台は自動運転支援システムが整備されていない道路も走れるよう、手動で運転できる運転席が設置されている。

 中学校の同級生はハンドルをみて、教科書の写真以外ではじめてみたと目を丸くしていたのを覚えている。

 8人乗車可能なミニバン型の自動運転車。その運転席にヨシオ君、助手席には私の計2人が乗っていた。

「こちらヨシカワ01 センダイRTC おはようございます。感度いかがですか?」

 この近辺の道路をすべて管理するセンダイ道路管制センター、だいたい道路管制センターの英訳であるRoad Traffic Controlの頭文字をと合わせてセンダイRTCとよぶ事が多い、を助手席と運転席の間に設置された無線機で呼び出す。

 横ではヨシオくんが、残り3台の自動運転車との無線でリンクを確立しているのが目に入った。

 村の道路はセンダイRTCの管制範囲外だが、広域道路48号線へ合流してからセンダイの街へ向かう道路はすべてセンダイRTCの管制圏内。

「こちらセンダイRTC ヨシカワ01 おはようございます。」

「センダイRTC おはようございます。AM0700に広域道路48号線へ」

 車のダッシュボードに表示された時刻はまだ6時。合流予定時刻まで1時間ほどあるが、これくらい前からセンダイRTCと連絡をとっておいたほうが、合流のときスムーズに行くというのを経験から学んでいる。

「ヨシカワ01 こちらセンダイRTC。了解いたしました。順序は合流ポイントに近づき次第追って連絡します。」

「センダイRTC ヨシカワ01 了解です。」

 無線機のマイクをダッシュボードへ戻すと、運転席のヨシオが大きくあくびをするのが見えた。

「また大学のレポート?」

 提出締切ギリギリまで大学の宿題に取り掛からないことをよく知っている

「そういうヨゾラだってまだ中学の宿題終わってないだろ?」

「学校につくまでには終わるもん。」

 不機嫌そうな表情を作り、ヨシオくんに向ける

 こうするとオロオロするのから見てて面白い。

「悪かったよ・・・そろそろいくか」

 ヨシオくんの運転で、静かに車が進み出す。

「後続車がちゃんと隊列を組んでるかモニターしてくれ」

 窓越しにあと3台の自動運転車がゆっくりと走り出し始めたのを確認して、助手席に設置されているのコンソールの表示を切り替えた。

 俯瞰図上に4台の自動運転車を意味するマーカーが表示される。

 青いマーカーで表現されたのがこのヨシオくんが運転する自動車、あとの赤いマーカーが他の3台の自動運転車だ。

 横並びに駐車されていた4台の自動運転車が一番左側に停められていたこの自動車から順番に発車していき、校門をくぐる頃には縦4台の隊列を形成していることを確認し、そのことをヨシオくんに伝える。

 そして通学カバンの中から宿題を取り出した。

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