あまりにも、あまりにも

 良い子とは一体何なのか。

 成績がいいから良い子なのか。自分たちの心を悩ませないから良い子なのか。

 しかし残念ながら、その良い子を利用する人間は世の中に少なくない。古今東西、ノーベル賞を持ち出すまでもなく人類のために作られたはずの技術が人類をさいなんだ例は枚挙にいとまがない。

 この夫婦は、まるっきり自分の中の安寧に浸っていた。

 もし一人だけでも、ふたりの不満を聞き入れる存在があれば。それがないゆえに、二人はこの結末を生んでしまった。

 悲劇と呼ぶにはあまりにもうかつであり、喜劇と呼ぶにはあまりにも悲しすぎる。




 ただどうしても、九年間も気づかないのはいかがなものかと言う不自然さがぬぐい切れない。
 あるいはこの結末を迎えるための必然だったのかもしれないが、それにしてもと言う気分はある。

 一年や二年で気付いた場合、どうなったか。それを考えるのは読者の自由かもしれない。