Letter 1

 こんにちは。はじめまして。

 お手紙を拝見しました。とてもびっくりしています。

 地球からの通信も連絡船も途絶えて久しく、まだ生き残っている方がいらっしゃるとは思いもしませんでした。

 申し遅れましたが、わたしはイヴといいます。

 ここは月面基地です。詳しい数はわたしにもわからないのですが、数千人から数万人の人々がここで生活しています。いいえ、生活していました。地球で発生したという未知のウイルスが月面基地内でも猛威を振るったのです。わたしが最後の生き残りです。

 お手紙が届くまで、ただぼうっとして過ごしていました。ただ漠然とした時間だけがありました。一日一日が過ぎるのがとてつもなく長く感じられました。どうせ基地の寿命が尽きるまでの命です。それならいっそ、今すぐにでも。そんなことを何度も考えました。

 あなたのお手紙を読んで、そんな自分が恥ずかしく思いました。あなたは誰もいない地球で、日々精一杯生きているのですね。恵まれた環境にいるわたしが泣き言を言ってばかりではいけませんよね。わたしも残りの日々を精一杯生きようと思います。

 この手紙はあの通信ポッドに入れて送り返します。

 もしもこれが届いたら……お返事をくださると嬉しいです。わたしも人と、生きている人と話したくて仕方がないのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る