ポンコツ女神と無能少年

あらうさ( ´Å`)

第1話 女神降臨

 冬もだいぶ寒さが強くなった頃、少年は一路帰り道を急いでいた。


「うう。寒さも厳しくなってきたなあ。日も落ちてきたし」


 体を震わせながら早歩きで進む。


「でもこの『ホウ★きゃん』はずっと前から欲しかったんだよ」


 懐に大事に抱え込んだ袋の中には最近人気に火が付いた流行りのゲームDVDが入っていた。


 暗がりの中、街灯の明かりを頼りに進む。


 少し進むと自販機を見つけた。


「おっ丁度いいところに」


 俺は自販機に小銭を入れ、温かいコーヒーを買う。


 ピロロロロロ


「当たりルーレット付きか。当たらないかなー」


 そしてルーレットはど真ん中に止まる。


「やった!」


「ぱんぱかぱーん!」


「よっし!・・・って、あれ?」


 いま誰かの声がしたような・・・


 少年はあたりを見回す。


 しかし誰もいない。


「気のせいかな?」


 俺は缶コーヒーのタブを開け一気に飲む。


「あー温ったまる」

  

「私にもくださいなのですよー」


 また聞こえた。今度はどちらから聞こえたのかもはっきりした。


 ・・・少年は自販機の上を見上げる。


 そこには異様な格好をした少女がちょん、と屈んでいた。


 少しの間、頭が真っ白になって。


「俺、疲れてんのかな。コスプレ少女が自販機の上で屈んでいるなんて」


 少女は声をかけてくる。


「幻覚じゃないのですよー」


 少年は目を細める。


「そんな所でなにやってんの?」


「よくぞ聞いてくれました!」


 少女は胸をどん、と叩く。


 げほげほ。


 強く叩き過ぎたらしい。


「・・・帰るか」


「帰らないでほしいのですよー!」


 少女は少年の退路を塞ぐように飛び降りる。


「帰ってエロゲーするくらいなら私の相手をするのですよー」


 俺はぎょっ、とする。


「な、なんでそんなこと知ってんの?」


 少女は両手を腰にやり、


「あなたの事なら私は何でも知ってるのですよー」


 少年はスマホを取り出し、


「すいません、警察ですか?なんか道端で妄言を吐く少女を保護したんですが。補導をお願いします。場所はーーー」


 少女はスマホを叩き落とす。


「なにすんだよ!スマホが壊れたらどうしてくれるんだ!」


「ひとを警察に売り渡そうとするからですよー!」


 少女はぶるぶる震えている。警察に嫌な思い出でもあるのだろうか。


「で、お前は一体何なんだ?」


 少女ははっ、として、


「申し遅れました。私は新生女神連盟の『です代』と申します」


 少年は訝しげに


「新生・・・女神?」


 スマホを取り出そうとして、


 少女に叩き落とされる。


「だから物を粗末に扱うなって。で、そのです代?変わった名前だな。が、一体俺に何の用だ?」


「あなたも随分変わった名前なのですよ?六道無能(りくどうむのう)さん」


 少年ははっ、と息を飲む。


 自分を女神と名乗る少女は告げる。


「あなたに危機が迫っています」

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