今宵も魔女は空を跳ぶ!

於田縫紀

プロローグ ロリコン男と謎の女教師

第1話 今の俺の事始め

その1 今は無き俺に捧ぐ

 冬の寒い夜、午後七時三十五分。

 俺はスーパーで無事購入した半額弁当を手にアパートへ帰る途中だった。

 幹線道路の交差点歩行者用信号は赤。

 俺は歩道の端で立ち止まる。


 俺の左前側には小学生風の少女。

 塾帰りだろうか手提げカバンを手にしている。

 小学五年生くらいかな。

 ちょうど俺好みの年齢だ。

 目の保養にぼーっと眺めてみる。

 残念ながら角度的に顔はよく見えないけれど。


 信号の待ち時間を示すランプが残り僅かという事を告げている。

 何でも無い信号待ちの時間の筈だった。

 しかし不意に強烈なスキール音。

 視界の左側だ。

 信号ギリギリで突入した車が交差点を曲がりながらタイヤを滑らしている。

 横滑りさせながら俺と少女の方へ。


 あ、これは俺、事故にまきこまれたな。。

 とっさに俺はそう理解した。

 逃げるにもニート歴十年の重い身体じゃ間に合わない。


 でもこの女の子だけは逃がす事は出来そうだ。

 彼女は動けないのか立ちすくんでいる。 

 でも俺と彼女の距離、そして俺との圧倒的な質量差。

 これなら何とかなる可能性が高い。


 俺はスーパーの袋を手放す間も惜しんで彼女の右腕を両手で掴む。

 本当は小さくすべすべした手の感触とかをゆっくり感じたいところ。

 だが時間が無い。

 思い切りよく俺の方へ引っこ抜くように彼女を引っ張る。

 圧倒的な質量差で彼女が車より早く横に吹っ飛ぶのが見えた。

 そのまま信号柱の陰になる場所で尻餅をつく。

 うん、そこなら安全地帯だしあの尻餅なら怪我にはならない。

 それに顔も結構可愛い。

 表情がひきつっているけれど。


 ちょっと安心しつつ俺は視界の反対側を見る。

 車が見事に横ドリフトをして俺に突っ込んできているところだった。

 うん、どうせ俺の身体能力では逃げる事は出来なかったしな。

 それに俺の人生、どうせ元々ボロボロだったし。


 最後にちょっといいこと出来ただけで満足だ。

 この世のロリを一人救えた。

 YESロリコンNOタッチの原則を破ってしまったが人命救助の為だ。

 これくらいはOKだろう。


 そこまで考えたところで視界が吹っ飛ぶ。

 強烈な衝撃らしいが痛みは感じない。

 色々景色が跳ぶように変わって最後は真っ赤。

 その後は憶えていない。

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