スペシャル短編

特別篇兄妹のバレンタインデー

それは、一年前の2月14日。


「お、お兄ちゃん・・・こ、これ。」


そう言って渡されるのは、

ラッピングした箱で・・・・・・・・!?


「ま、まさか・・・これは

バレンタインチョコ・・・なのか!?」


そう認識すると手が震え、声にも震え、

魂も震えるには、十二分すぎる威力の

あるセリフだったから。


「か、勘違いしないでね。

これは、受験で頑張ったお兄ちゃんの

ご褒美で本命とか全然、全然、全然・・・

違うからねぇ!!」


分かっていたけど本命チョコをそんなに

強く否定しなくてもいいのに。

でも、分かっている。

実の妹は、優しい。そして、リアルの兄妹は

恋に落ちることは・・・ないことも。


「ありがとう。最高に嬉しいよ!」


俺の深層に燻るこの感情は昂って

なかなか、収まってくれないが。


(妹にバレンタインチョコ(義理)に

ここまでドキドキするなんて・・・

我ながらシスコン過ぎるなぁ。)


「う、うん、そうなんだ。

えへへ・・・・・・」


頬を赤らめながら嬉しそうに笑う。


「それじゃあ、俺は自分の部屋に戻って

貰ったチョコを食べるよ」


「えっ!?・・・・・・・その、

ここで食べないの?」


俺の言葉に驚きショックを受けている妹の

唯悧ゆいり。そんなに衝撃的ことを

言ったかな?


「あ、ああ。流石に作ってくれた人の前に

食べるのは・・・なんだか・・・・

恥ずかしいから」


「・・・・・・」


片想いをしているのに義理チョコとはいえ

食べるなんて高難易度なので自室で

食べようとしたけど・・・どうするか。

そう泣きそうな顔されると・・・・・・


「じ、実はここで・・・食べようと

ようと今にして決意した!」


結局、俺は悲しい顔とか見たくないし

嬉しい表情、常に笑っているのが

好きだから。


「・・・・え?・・・ほ、本当」


「折角、作ってくれたのに

本人の前で食べるのは一種のお礼かな?

なんて、思った所存です。はい」


自分でも恥ずかしくなって敬語になった。


「そういう優しいお兄ちゃん・・・

わたし嬉しいよ」


いつもの屈託のない笑顔で言う。

それから、ニコニコされながら

食べる終えるまでじっくり

見られるのだった。


そして、自分の部屋に入りドアを閉めると

ベッドにダイブする。


「くうぅ~~~~、まさか・・・・・

唯悧ゆいりからバレンタインチョコを

・・・最高!やったーー!!

世界遺産レベルの思い出だよ」


支離滅裂になるほど悶える。

後から冷静になってから、頭がおかしい

独白だなぁ。っと思った。


それと、こんな気持ち悪い

独白や悶えるのを妹に

見られたら・・・兄妹の関係が即時に

終了エンドになってしまうだろう。

そう考えるが、少し前の会話を

思い出して一人ニヤニヤするのだった。


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