3

 どうやら、まだ雪乃は朝の目覚めが悪いご様子である。


「だから翔兄、雪姉は私に任せてさっさと朝ご飯を持ってきてよ。ああ、後、冷たいタオルと氷を忘れずにね……」


「え……? いや、いつも思うんだがなんでその二セットがいるんだ? 持ってくるのは構わないけど……」


 翔太郎は、自分の目の前にあるドアを見つめた。


 確かにこの日になると、必ず里菜はその二つと朝食を持ってくるように指示を出してくる。朝食は別として、なぜ、その二つがいるのだろうか。一体、何に使っているのか物凄く気になるのだ。


 以来、彼女たちの部屋で何が起こっているのかいつも気になってしょうがなかった。里菜の小悪魔的テクニックが想像できない。


「まあ、簡単に言えば雪姉対策道具って言ったところかな?」


「対策道具ねぇ……。この二つでその眠り姫をどうにかできるならさっさとしてくれ。そして、俺を学校まで送ってくれと言っといてくれよ」


「はいはい、分かってるよ。私も同じこと考えているから……。それよりも早く。タイムイズマネーだよ」


 ぐいぐいと俺の腹を何度も肘うちをして来る。早く行けとそうする里菜。


 翔太郎は、深々と溜息を漏らしてそのまま言われた通りに台所で用意しておいた朝食をお盆の上に載せて氷と冷たいタオルを用意すると、二人の部屋に向かった。


 部屋の前に立っている里菜に渡す。


「……ご苦労様」


「どういたしまして……」


 不思議な顔で翔太郎を見上げるが、その表情も慣れてしまった。


 そして、受け取った里菜は一度部屋に戻って行った。やはり、休日明けの女子というのはこうも機嫌が悪いのだろうか。


 翔太郎は、頭を掻きながら欠伸をし、台所に戻った。


 今日の朝食はものすごく手抜きと思われるが、翔太郎にとっては意外と頑張った方であり、それなりに味には自信がある。


 人が食べられないほどの料理ではない。


 料理と言えば、里菜のあれは相当なものである。


 一度、里菜の手料理を食べた三人はその日から次の日まで何も食することもなく。布団の中で痛みと目眩に苦しみながら寝ていたことがある。


 それ以来、翔太郎がこうして作ることになっていたのだ。


 白みそを使ったみそ汁とゆっくりと飲み干す。

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