山田四兄妹篇

1-1

 山田家は、両親を事故で無くしており、それ以来、兄妹助け合いながら四人で生活している。


 長男の陽介ようすけは二十五歳のライトノベル編集者。


 長女の雪乃ゆきのは二十歳の大学二年生。


 次男の翔太郎しょうたろうは十六歳の高校二年生。


 次女の里菜りなは十三歳の中学二年生。


 四人はとある県の豊かな街にある一軒家に兄妹助け合いながら住んでいた。



「翔太郎!」


 と、雪乃が叫んだ。


「ほらまた、ゲーム機出しっぱなしじゃない。勉強する前に片付けてからやりなさい! 捨てちゃうわよ!」


 勉強している翔太郎に注意した。


「どうせ、今まで捨てたかとねぇじゃん……」


 翔太郎はしぶしぶと散らかったゲーム機を直しながら雪乃に聴こえないくらいの小声で愚痴を言った。


 雪乃はそれに対してまゆがピクッと動く。


「それはあんたが悪いんでしょうが! 私だって暇じゃないのよ!」


 怒りに任せて、雪乃は翔太郎を怒った。


「…………」


「…………」


 雪乃が起こった後、その場の空気が静かになる。


「ふん。そんなに怖い顔をしたところで、もう、怖くないもんね」


 翔太郎は、フッ、と息を吐く。


「ふざけるのもいい加減にしなさい」


「姉ちゃんはうるさいんだよ!」


 翔太郎と雪乃の組合が始まる。


 そこへ末っ子の里菜が欠伸をしながらリビングに入ってきた。


「雪姉、ご飯い……」


 タイミングが悪かった。


「ちょっと、何やってるの⁉ 二人とも止めて!」


 里菜は二人の間に入って喧嘩を止める。


「里菜、事情も知らないで入ってこないで!」


「だって、こんな所で喧嘩されたらそうなるでしょ、雪姉も翔兄もいい加減してよ‼」


 里菜が雪乃に対して注意する。


「ほんと、ほんと。姉ちゃんには頭を悩まされるよ」


「……里菜だって、家の手伝いなんてそんなにしないじゃない。翔太郎もそうよ‼」


「だって、私、中三だもん」


「それを言うなら私だって大学二年生よ」


 今度は里菜と雪乃が言い合いになる。


「お前ら、うるせぇーよ」


 翔太郎がしゃしゃり出る。


「翔兄、うるさい」


「翔太郎、話に入ってこないの‼」


 二人は翔太郎の頬を思いっきり叩く。


「……雪姉がいつも怒るから……もっと話し合おうよ‼」


「ああ、もう。私、お風呂に入ってくる!」


「あ……」


「里菜。お前がくどい事を言うから……」


 翔太郎が小笑いする。


「お前、姉ちゃんを怒らせるなよ」


「翔兄が原因でしょうが‼」


 里菜がカンカンになって翔太郎に怒鳴る。


「とにかくゲーム機を直すのを手伝ってくれ……」


「仕方ないなぁ……」


 里菜はそう言いながら翔太郎の頼みを聞いて、片付けの手伝いをする。


「翔兄、勉強は……?」


 翔太郎の動きが止まる。


「ああ、あんなの勉強じゃねぇーよ。ただの答え写しなだけ、勉強なんて真面目にやるわけないじゃん。馬鹿じゃ……」


 と、話しているとそこに服を持ってきた雪乃が現れた。


「あ、そう。今度からテスト勉強は一人でやってよね」


 イラっと来た雪乃は、足音を立てながら風呂場に向かった。


「ちょっと、姉ちゃん。嘘だってば‼ 今の言葉のあやで……」


「うるさい。私に一週間、話しかけるな!」

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