第4話 国の贄


このカルーラという国が

現在この大陸で一番の大国だ

我々もこの国から沢山の借りがある


私に説明してくれてるのは

ウイジール先生だ

今後伝統やこの周辺諸国の力関係などを

私に教えてくれる

なので今日からはウイジール先生だ


他でいうと

貿易都市デアポロス

この年も周辺の諸侯達が

ついぞ世話になっててな

ここの領主はとことん金持ち

フィンダー家が統治している

独立都市だ


机に地図を広げながら

指を差しひとつひとつ私に教えてくれた

それらの情報を私もできるだけ頭に入れていた


それで

ガランサスなにか質問や

気になることはあったか?


私は思った事を口にしてみた


アリュメトは身動きを封じられていますね

この山岳地帯に遠征するのにも

カルーラ王国の関所がいくつかあり

港にはフィンダー家の艦隊が・・・

山岳での収穫や猟

港の漁

アリュメトはすべてにおいて制限がある

国費はどのように賄っているのですか?


ウイジール先生は口角をあげ

にやりとしていた

この人の癖だろうか


そうだなこんな状態では

アリュメトは一晩で餓死してしまうな

我々はカルーラ王国と戦い敗れた

城は包囲され国は飢えていた

そんな折カルーラ王国から

王は降伏勧告を受け

アルマ姫をカルーラ王国に差し出したのだ


アルメンドロス王子の姉君ですか?


そう

まだ王子が幼いころの話だ


王子には姉君がおり

その美しさは大陸全土に響き渡っていた


しかし戦に負けた我々は

カルーラ王国にアルマ姫を差し出し

アルマ姫はカルーラの王子と結婚した


そしてアリュメトはカルーラと親戚関係になり

戦は終わったのだ


あれから十数年の間に

カルーラはアリュメトの領土周辺に関所を設け

この国は縛られた


ウイジール先生は語ってくれた

完全にカルーラに従属しているこの国の現状を


それからは

大陸内外の領土に対し

カルーラ国の為幾度も戦争に明け暮れていると

戦争では騎士王国の異名をとるように

連戦連勝

アリュメトの名は上がるが

民はその都度村の男手を奪われ

国の生産力がガタガタになっている


この国が生き残るには戦争で勝ち続けるしかないのだ

なんと破滅的であろうか


ウイジール先生は私の顔を見た


ガランサス

お前は王に期待されている


以前この国は恵まれた土地

精鋭の騎士たち

高い国力を持ちながら


神からは見放されている

お前の幸運がこの国には必要だ


相変わらずウイジール先生は

口が達者なようだ

何も持たぬ奴隷を褒めるのもわけないようだ


私は質問をした


では私の役目はなんでしょうか

幸運を頼りにされるというのも

曖昧で困ってしまいます


ウイジール先生は

また口角をあげた

やはりこの人の癖だな


頼まれてくれるか?


ガランサス

役目を与えたい


はい

なんでしょうか


カルーラの密偵だ

カルーラに潜り

アルマ様の所在を突き止めてほしい


唐突であった


もちろんどんな役目も務めます

しかし

まだこの国に来て日が浅く

元奴隷の私にそんな大役を・・・

裏切る可能性も考慮すべきです


また口角を上げるウイジール殿

口角が上がりっぱなしだ


ガランサス

私はその物事を客観的に捉えるお前の考えを気に入っている

この国の者たちに欠けているものだ


お前の言う通り

これは重要な任務だ

決して失敗はできない


しかし顔の知れていないお前にしかできん事だ


これより一年


私はお前に潜入する為の作法

知識、様々なもの教えるつもりだ

そしてその間


お前にはこの国を愛してほしい


我々と食卓を共にし

国の為に鍛錬を積む兵士たちと共に励み

それを支える民達を案じてほしい




どうやら本気らしい


私にこの国の命を懸けるつもりだ

それほどまでにこの国は追い詰められている


わかりました

その時が来るまで備えます


私は覚悟を決めた



と同時にまた疑問が浮かんだ




アルマ姫の所在を確認した後

私はどうすれば?



所在を確認した後共にカルーラを離れますか?





それは難しいだろうな



ウイジール先生は口角を下げた








お前に任せる









じっと私の顔を見つめウイジール先生は冷たく言った







私は察した





人質であるアルマ姫を殺害せよという事だろう






そしてこの作戦がウイジール先生の独断である事も



そしてこの任務が終わった時

私も消される事だろう









わかりました

務めを果たします



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