戦略的撤退、そして粛清少女の心は燃える

「どうやら、本当だったようね。それについては、どうもありがとう。でもその力、この短時間で腕まで元通りなんて、益々危険ね」


「悪意なんてないですよ?ホントに! ほら、一緒に戦ったし、ここは友好的にね? ね?」


「私はコントローラーズSクラス戦闘職員、リアトリスです。侵入者、アナタにはマザーから逮捕命令が発令されています。投降しなさい。さもなければ燃やします」


 ダメだめっちゃ脅されてるぅぅ! 怖い怖い!美人に睨まれるのは怖い! そんな中、アネモネと呼ばれた女性が誰かを運びながら俺に話しかけてくる。


「おいあんた!人を治せるんだろ! アングレカムを、アンジーを助けてくれないか!」


 アネモネさん、必死の形相と言うやつだ。断る理由もない。多分、先程ペイグマリオンを放り込んだ古河の力、「古」に放り込めば行けるはずだ。あそこはメンタルに効くらしいし。


「もちろん、かまわな……」


「待ちなさい、あなた何を言っているの?」


 金髪のリアトリスさんが俺のセリフを遮る。やはり完全に敵視されているようだ。


 昨日ストレプトカーパスと戦ってるし、立派に危険不法侵入者だもんな。そりゃ敵扱いだわ。


「マザーからの命令は絶対。そいつは逮捕して情報収集するのよ。アネモネ、わかっているでしょう? 」


「先輩!どうしたんです? アンジーを治せるかもしれないんですよ! 」


「マザーからの命令を守りなさい。反逆罪で逮捕するわよ?」


「――――先輩、本気で言っているんですか? 」


《アングレカムと呼ばれている女性をスキャン。精神レベルが異常数値を示しています。精神乖離状態、危険です 》


「あー、その子を治す方法があるんだ。そういう空間があって、そこに連れていきたいんだけど心配なら誰か一緒に来ても……」


「ダメよ。アナタを逮捕します」


 まるで話が通じない。ま、どうせバックれるつもりだったし? かくなる上は、あの子を拉致って逃亡開始だ!


「なら悪いが! 逃げさせて貰うよ! 」


 古河の力を解放し、ゲートを作り出す。守谷の力でリアトリスの熱戦を防御し、ダイゴはアングレカムを掴み、ゲートへと飛び込む。


 凄まじい熱だ。生身で食らったら蒸発だぞ!?


「私が追跡します! 」

「勝手に動かないで! カーパス! 」


 ストレプトカーパスもゲートへと飛び込み、アングレカムを追いかける。それに続き俺も飛び込む。牽制射撃を続けていたカシマが最後にゲートへと飛び込み、ゲートを閉じる。マジで怖かった。やべぇよあの人、目がイッちゃってるよ。完全にレディースの族長だよあれ!


 そうして、古河の能力「古」を用いて、俺、ダイゴ、カシマ、アングレカム、ストレプトカーパス、そして捕縛したペイグマリオンの6人が空間内で一堂に会することになる。


 この後、まさかあんな事になろうとは、全く予想がつかなかった。



 これも可能性なのかねぇ?


◇◇◇


「分かっているわね? アネモネ。アナタはミッションを妨害したのよ? 」


 逃亡者が消えた後、リアトリスはまるで敵に対して接するようにアネモネを問い詰める。


「リア先輩、一体どうしたんですか! アナタが味方を見捨てるだなんて! 最近おかしいですよ!」


「おかしいのはアナタでしょう? アングレカムは記憶のバックアップがあるのよ? 一体何が問題なの? アナタはマザーを裏切った。そちらの方が余程問題なのがわからない? 投降しなさい。Sクラス権限により、アナタを反逆罪で逮捕します」


『燃えなさい。私の思い』


「先輩……悪いんですがね、その命令には……アッッグッッッ!」


「皮肉なものね。空気を操るあなたが酸欠なんて」


 アネモネの周囲が爆炎で包まれ、一瞬で酸素を燃焼させる。彼女は酸欠状態に陥り、崩れ落ちるように倒れこむ。


「アネモネ。アナタを逮捕します。アナタはさようならね。そしてまた会いましょう? 」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る