第4話 休憩中です

「疲れたよー」


 ブラーナの夕飯の支度をしてから、シップに帰ってきたララは、リビングのソファにダイブした。船の生活スペースはキッチンにリビングダイニング、バストイレに寝室が三つあるファミリー仕様になっている。中だけ見れば一般的な家と勘違いしてしまいそうな、家庭的な雰囲気にあふれている。


「ララ、お風呂の用意ができているから、休むのはその後にしなさいね」

 マミがモニターに現れ、ララはメッと叱られてしまう。

 それにはーいと間延びした返事を返して、素直にバスルームに向かった。


 リビングに戻ると、夕食の準備がすっかり整っていた。

 ララは、マミの映るモニターの正面に座り、マミの作った料理に舌鼓を打つ。

 料理は作るのも好きだが、作ってもらうのも大好きだ。

 宇宙船マミの内部は色々なアームがあり、マミは家事も器用にこなす。


「悪いもの、思った以上にいたね」

「ええ」

 チョーカーを目のかわりにし、ララと同じものを見ていたマミが悲しげに同意する。


 物でごちゃついた屋敷の中は、ブラーナの心の重石になるような小さな魔物や弱い霊が、思った以上に住み着いていた。ララが箒ではらうと消える程度の小物だったが、それでも数が多い。


「魔物があれだけいたら、健全に暮らしていけと言う方が無理よね」


 人とは関わらなくとも仕事は精力的にこなしているので、ブラーナがあんなに嫌な気を纏わせているとは思ってなかったのだ。

 彼に気付かれないよう悪いものを祓うのには、少々骨が折れた。


「おじさんがブラーナさんの友達でいてくれたのは、幸いだったね」

 自分も報告を聞きたいと、モニター越しに晩餐ばんさんに飛び入り参加してきたロジャーに、ララは微笑みかけた。

 今回の依頼人であるロジャーは、ララの後見人でもあり、普段は彼をおじさんと呼んでいる。


  ★ 


 ララは孤児だ。

 宇宙を漂っていたこの宇宙船に、生まれて間もないララが一人乗っていたという。それを保護してくれたのがロジャー。

 船には識別番号や航行記録はなく、船が誰のものかどころか、どの星から来たのかさえ分からなかった。


 ロジャーから報告を受けた管理局は混乱し、総力を挙げて調査したがわからぬままだった。その間にロジャーはララと船に名前を与え、自分が後見することを申し出た。当時のロジャーはまだ二十歳だったが、大学を卒業して十年。地位もあった。何よりペリエ家では、代々なんらかの支援活動をしていたため、管理局もララの身元が判明するまでの後見人を、ロジャーに任せたのだった。身内からは、仲の良かった姉を亡くした悲しみを癒せるならば、との思惑もあったようだ。


 そのペリエ家では、暗黙の了解で、十代のうちに大学で博士号をとることになっている。ララは血縁ではないものの、後見者ペリエの恥にならない努力を続け、大学を卒業したのはつい先月。

 ブラーナにも伝えた通り優秀な成績を修めて卒業したが、実はまだ未成年で、仕事の経験は浅いのであった。


  ★


「とりあえず計画は順調! 明後日まで頑張るよ」

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