僕はまだ、本当の人生を知らない。

トゥルーY

episode1 ダメな男の物語

 平成5年の冬



 彼は産声を高らかに上げて、誕生した。




 髪の毛を大量に生やしながら。


 将来、月1で美容室に通うとも知らずに。





 彼、いや、僕の名前は猫神壱(ねこがみいち)

 とある北海道の田舎で生まれた。




 壱、5歳 普通に鼻水を垂らすただの幼稚園児




 壱、10歳 木登りを覚えたただの小学生




 壱、15歳 将来の事など考えていなかった、ただの中学生


 この時、初めての彼女が出来る。


 しかし、手も繋げないウブな男、公園というデートプランしか立てれない為、振られる。

 初の失恋を味わう。




 壱、17歳 2人目の彼女が出来るが、1ヶ月ももたずに、別れる事になる。

 彼女が元彼と寄りを戻したのだ。




 壱、18歳 高校を卒業し、進学する事を決意する。

 この時3人目の彼女が出来るが、付き合いが長くなると彼女が重くなってきてしまい、耐えきれず壱から別れを告げる。


 初めて女の人を振る。



 初めて、人を振る事で振る側の人の気持ちがわかった。



 そして、田舎から出て、大学生になった。


 大学デビューして素敵な学生ライフが始まる。





 そして、21歳の時に年下の彼女が出来る。

 自分史上、最高の美女であった。



 付き合ってからは、何をしても楽しい。

 不幸な事なんてこの世にないと思っていた。




 こうして、猫神壱は素敵な彼女といつまでも幸せに暮らしましたとさ、、、



 めでたしめでたし。






 とは、ならなかったのである。




 人生そんなに甘くはなかった。





 わずか3ヶ月で理想の美女と別れる事になった。



 もちろん、向こうから振られてしまったのだ。



 壱は、こう思った。

「あの子だから上手くいかなかった」

「相性が悪かっただけだ」

「他人同士なんだから合わないのなんて当然」



 相手の責任にしていた。




 まったく自分は悪くないスタンスである。




 壱は次頑張ればいいやと思い、何も反省しなかったのだ。



 しかし、それからだが、あの時みたいな自分好みの美女と付き合う事など出来なかったのだ。


 当たり前だった。



 前の失恋から何も学ばなかったのだからだ。




 しかも、自分好みの美女と付き合った事により、目が肥えてしまっていたのだ。



 だか、それでも行動せず、なんとかなるだろうと思って過ごすしていると、大学生活が終わってしまった。





 そして、社会人になり、更に出会いがない事に気づく。

 2年経つ。

 壱は24歳になった。

 壱は身長は168㎝、どこにでもいそうな普通の青年で、仕事は会社員である。


 社会人になっても全く彼女ができる兆しなし。


 遂に壱は彼女が出来ないのが、職場に出会いがないからと、世間のせいにし始めた。



 そんな中、ふとテレビをつけると街コンの特集がやっていた。

 街コンには男女が出会いを求めて、やってくるのだ。


 これだ!

 壱は出会いを求めて、街コンに行く決意をした。





 恐る恐る申し込んでみた。



 そしていよいよ当日。



 街中のビルの中に開催店舗が入っている。


 エレベーターで6階まで上がるのだが、エレベーターの前には、街コンの参加者であろう男女が数名いるのだ。


 この人達も出会いを求めているんだ。


 そんな事を思いながらエレベーターで6階に上がる。



 ドクン、ドクン



 と心臓が鼓動する。


 心臓の音が聞こえるほど壱は緊張していたのだ。



 恐る恐る会場に入ると

 スタッフがおり


「身分証と申し込んだ時の携帯の画面見せてください」

 見せ終わると

「では、あちらの席にどうぞ」


 そして、席に着く。


 初めて行った街コンは着席タイプの街コンで、30人くらい人がいた。


 席に着くと隣の席には、男の人が座っている。



 男の名前は田山康平(たやまこうへい)


 壱より2つ歳上の26歳である。

 見た目は年齢相応であご髭を生やしており、渋めの塩顔男子である。



 壱は話しかける

「こんにちは、隣失礼します」


「こんにちは、今日はよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします」




 軽く隣の人に挨拶を済ませ、しばらくすると




 スタッフがまたアナウンスをする。

「みなさん、お酒を取りに行って下さい」



 カウンターにお酒を取りに行くシステムであった。




 壱はハイボールを頼む。


 康平は焼酎を頼む。


 席に戻り、また、康平と世間話をする。



「あー酒飲むと煙草をふかしたくなるな〜」

「そうなんですね。僕は吸わないので」


 康平はタバコが好きなようだ。



 しばらくするとまた、スタッフが。



「では、皆さんグラスを持って下さい」


「今日は着席型のパーティーです。20分毎に男性が時計回りに席を移動して下さい。連絡先の交換は自由です」



 そして、街コンが始まった。



 まずは、正面の席にいる子と話す。


 席は4人1組の席である。



 康平はいきなり、恋愛トークを繰り広げる



 康平はいきなり

「2人はどれくらい彼氏いないの?」

「え、1年くらいかな」

「私は2年とか」




 初めて街コンに来た壱は、この会話が普通なのかわからなかった。


「普段休みは何してるの?」

「よく街コンとか来るの?」

「仕事何してるの?」




 康平は質問の嵐であった。


 こんな質問攻めで、いいのか壱はわからなかったが、康平の異様なまでのゴリゴリさが羨ましくも思えた。



 しまいには


「あー酒飲むと煙草をふかしたくなるな〜」



 また、言っている。

 口癖なのかもしれない。



 壱もなんとかして輪に入りたい。

 しかし、話そうとした瞬間・・


「それでは、席を移動して下さい」

 とアナウンスが

「あ、もう時間か!とりあえず連絡先交換しよ」


 康平の合図でその席の全員と交換する。



 壱も便乗して、連絡先を交換して、席を移動する。

 よし、次こそはいっぱい話すぞ!

 と意気込んだ。




「こんにちは〜」

「ありがとうございました」

「仕事は何してるんですか?」



 こんな発言しか出来ない、、



 これを何席も繰り返したのだ。


 ふと、他の席を見るとかなり盛り上がっている席があるではないか、女の子達も楽しそうである。

 その席の長身の男がかなり、話術があるように感じた。


 そうこうしてるうちに最後の席に来た。


 特別印象に残るような事も出来なかった。


 連絡先はかなりの数交換したが、多くのライバルがいる中、普通に考えたら、壱、康平のペアは他の席より盛り上がりが欠けている。


 チームワークも悪い。



 そして、最後の席も終了の時間となる。


「今日のイベントはこれで終了になります。参加ありがとうございました」




 壱と康平はとりあえず、会場を出ることに、、


 他の男達は二次会を誘っているが、、


 そんな気力も残っていない。



 会場の外に出ると、女の子達とものすごく盛り上がっていた、長身の男がいたのだ。


 彼の名は四天玉三郎(よんてんたまさぶろう)



 190㎝近くはある。

 しかし、お世辞にもカッコイイとわ言い難い容姿であった。


 壱は恐る恐る話しかけた。


「あのー さっき街コンにいた方ですよね?」

「そうですよ。参加してたんですか?」


「はい。途中で盛り上がりがすごい席があると思

 って見てました」

「そんな事ないよ、普通だよ」


 壱はどうしても彼と知り合いになりたかったのだ。


「よければ、連絡先交換しませんか?」

「いいですよ」



 すんなり、承諾してくれたのだ。

 意外と気さくな人であった。



 今日の収穫としては、彼の連絡先をゲットしたところである。


 そして、四天、康平とも別れて家に帰る。


 最初はとりあえず四天の連絡先を聞いたけど、連絡するつもりなんてなかった。


 だが、せっかく行った街コン。

 何も収穫なしならお金がもったいないと思い、勇気を振り絞って3日経った頃に彼に連絡して見ることにした。


 メッセージで

「この前はありがとうございました」


 すると、、


「こちらこそありがとう」


 返信が来た!


「この前の街コンどうでした?女の子と繋がりました?」



「女の子と昨日飲みに行ってそのままホテルに行ったよ」




 !!!!

 壱は衝撃を隠せなかった。



 確かに高身長だが、彼はまだ学生なのだ。


 壱の方が見た目はいいと思うし、社会人だし。

 なぜだ!!!


 不公平だ!


 と、いつものように世間や人のせいにし始めた。



 しかし、ふと考えた。



 なぜ、彼は女の子を口説く事が出来たのか?

 ふと、あの時の街コンを思い出した。


 女の子が楽しそうにしていたあの時を



 そうか!!

 壱の頭の中で何かが閃いた。


 女の子を楽しませる事が出来たからだ!

 そこに辿り着いた。



 この瞬間、女の子を楽しませるのに、見た目やスペックは関係ないという事に気付いた。



 壱は思った。


 自分も四天玉三郎のように女の子を楽しませて、口説いて、ホテルに行きたいと。



 そして、壱はある決意をする。


 理想の美女とまた付き合いたい。



 その為に、数多くの女の人と出会い、遊んで、口説こう。



 もし、次理想の美女と出会った時に失敗しないためにも、女の子を楽しませれる男になる。


 こうして、壱はいろんな女の子と遊ぶ、ワンナイトの道を歩き始めた。

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