★-2 後編 【幽霊に囲まれた部屋から逃げる方法】




「ハイどうも〜、いただきますっ! あと、

おはようございますっ! 『ゴーストイーター』のウスバカゲロウ一号ですっ!」


『一号の寝癖がヒドすぎるw』


「よく眠れましたかっ? 俺はバッチリです! 1人で眠れるのっていいですね〜。俺には年の離れた弟がいて、ひーふーみー……うん、たぶん二十歳ぐらい違います! 全面的に世話をしているんですよ。そんだけ違うともう弟って言うより息子って感じですよね〜。まぁ家族には変わりないんですけど!」


『一号の弟くんについてはよく話を聞かされたよ。弟バカだからなぁ』


「なんつーか、家族っていいものだなぁと思うんです。だって、見知らぬオジさんオバさんたちと一緒に住めますか? 無理ですよね? 産まれたときから知っているのっていうの、すごい運命でしょ。だけど時間が全てってわけでもないけどね〜。だって、出会ったばかりでも不思議と意気投合する友達っているじゃん?」


『僕たちみたいな、ね』


「それでも、俺が家族っていいものだなぁって思う理由は……切っても切れない縁みたいなものを知ってるからなんです!」


『縁も善し悪しだけども』


「たとえばね、こういう事故物件! 孤独死した後の整理整頓、誰がやると思いますか〜?」





 ミシ……





『管理人さんかな?』


「最悪、不動産会社がやるんですけど、それは最悪の最悪。まずはご遺族が行います! 『縁は切ってますので』って断られることもあったけど!」


『めっちゃビビったよね……』


「でも人は1人じゃ産まれないじゃん? 物理的に!! あはは!!!」


『下ネタ?』


「切ったつもりでもしぶとく繋がる縁っていうの、なんかイイよね! グッとくるよ!! 浴槽で腐乱したご遺体の遺族に電話した時に『ソレ、まだいたんですね』って言われたときには本当にゾクゾクした!!」


『それ、絶対別の意味のゾクゾクだよ』


「あぁ〜、腐り果ててまでそんなことを言われるなんて、この人はどんなヤベーことをやらかしたんだろう!! なんて思っちゃいます! ハイ!! そんなんさぁ、他人だったら確実に喧嘩別れになって二度と会わないじゃん? でも家族だったらどんなに好きでも嫌いでも、一緒にいないといけないし、いつか別れないといけないのって不思議の極みじゃない??」





 ミシ……

 ミシ……





『それが家族ってもんじゃないの?』


「家族の話はこれくらいにして……ここの住人は、そういう家族との関係がちょっと拗れた結果、事故物件になってしまったわけです! 全員が全員、家族ガチャでクリーンな札を引けるとは限りませんから、住人が悪いなんて口が裂けても言えませんけど!」


『※家族ガチャっていうのは、どの家庭に産まれるかをガチャガチャに例えた一号の造語です。たぶん、どんな家庭に産まれるのか子供は選べないし、親もどんな子供が産まれるのか選べないって意味だと思います!※』


「ブラックな札引いちゃっても努力はできるじゃん? でもどんな札を引いても、自分の気持ちひとつで人生はいくらでも変えられるんです!! 人生の主人公は自分だから!!」


『一号、トバしてるなぁ笑』


「だから、どーして事故物件になっちゃったんですか〜って聞いてみたんですけど!!」


『聞いたの!? どうやって!?』


「全然返事がない!! そして相変わらず部屋から出られない!!!!」


『最悪、飛び降りたら?』


「鍵はかかってないんですけどね〜。隣のビルと距離が近いから飛び降りて逃げることもできないし! 残念!!」



 ミシ……

 ミシ……

 ミシ……



「そしてそして、さっきから俺の周りを取り囲むように響く足音!!」


『結構鮮明に聞こえるんだけど……』


「でも気のせいなんです! こんなもの!! エイヤッ!! ソイヤッ!!」


『窓を力強く開けたり閉めたりしないで!! 他人の物件だから!!』




 ガダンッ!!!




「うおっ!? ビックリした!!」


『何かがカーテンレールから落ちたね』


「なんだよ、もぉ〜」


『片づけ損ねた石かな?』


「なんか、平たい石ですね……すべすべ……見たことない文字が……あ〜、これは……うん。わかりました!! これは板石と……」




 ブツッ。






***





「えっ? なんでここで切ったんですか?」


「この頃は動画の尺とか引きとか気にしてなかったからね〜。切るところがここしかなかったんだよ」


「良いところで切らないで下さい」


「これから解決編の動画撮るから、三号くんはすぐに観れるよ!?」


「変な小手先ばっかり上達して……まったくもう」


「動画作りってそういうものだから! あっ、できるだけ早く、明日には解決編あげるので!! 日付またいじゃうかもしれませんが、よろしくお願いしま〜す!」


「一号さん、相変わらずでしたね」


「本当だよね〜いつもあの調子だから、一緒にいて楽しかったなぁ」


「疲れたりしませんでした?」


「まさか! いつも笑ってたよ。そういえば、一号の弟っていまどうしているんだろう」


「気になりますか?」


「うん。何度か会ったこともあったし。本当に仲の良い兄弟だったな〜」


「生きてたら何歳くらいだと思います?」


「生きてたら!? 不穏なワードやめてよ!!! えっと、一号と20歳違うってことは……今は10歳くらいかな?」


「三号も一号さんと兄弟だって言ったら、信じますか?」


「えぇ〜? だって、年齢が違うし!! いくら僕でも騙されないよ!!!」


「ぽんこつ……」


「えっ!? なに?」


「一号さん、二人兄弟だとは言ってないでしょ。三人兄弟かもしれないじゃないですか」


「そんなん言い出したらキリないじゃん! 怖がらせるのやめてよ! それに三号くんと一号の顔、似てないし!!」


「素顔を見たことがないからですよ」


「見せてくれるの?」


「イヤですけど」


「やっぱり!!! じゃ、明日は解決編でお会いしましょう!! ちょっと変則的でしたが、いかがでしたかっ? ごちそうさまでしたっ!」


「ばいばい」


「ばいば〜い」





<コメント:新着順5件表示>


アカウント名:ハはっ

確かに板碑はガチもんですね。

でも一号さんって毎回ガチもん引き当てるから、呪われてるんじゃない?笑


アカウント名:nacy

上の人、コメント欄でネタバレしてるw

でも板碑ってなんのことかわからんww

一号、たとえスズメバチに刺されても骨折れても「気のせい!」って言って病院いかないスタイル貫きそうですな。


アカウント名:アレンダービー

最初、違う動画開いたかと思った!

もしかして、大声で独り言喋ってたのって足音を消すため?

結局、一号もビビってるじゃん!!


アカウント名:非がち風

一号の弟、最初の頃はよく話に出てたけど最近全然だね〜。

弟は兄の失踪についてどう思ってるんだろ。

流石に捜索願とか出してる???


アカウント名:R san

good^^

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る