第8話

 そして、私は待った──。


 私が返したメールの返事は、数日のあいだ、来無かった。

 文面に添えた謎への正確な答えが分から無いか、それとも、正直に答えるかどうか迷っているのだろうか……?

 そんな疑問が浮かんでは消える。


 平日の放課後、ついに返信が来た。

 回答を確かめると、9、5と言う数字が書かれていた。

 当たっている……!

 メールには、画像も添付してあった。


 すると、そこには何と……懐かしいエクスリストの面々が映っていた。

 全員では無かったが、写真に映るかつての仲間は皆、それぞれの仕草で笑顔を浮かべていた。

 だが、やはりと言うべきか、何人かは顔に負傷した形跡がある。

 その傷は何者かによる拷問による物かも知れ無いと思ったが、そんな事をするくらいなら、その何者かは最初から私を誘拐しているはずだ。

 私は写真を送って来た彼らと夜中までメールでやりとりし、その安否と絆を確かめ合った。

 以上が、この地球と言う星で私が今まで過ごして来た時間と、その前後の、かなり省略した概要だ。


 他にも色々な事があったが、これから同朋のX6と服を買いに行く私には、待ち合わせの時間に遅れ無い様に行動する責任がある。

 この地球も母星エムロードと同じ様に、人々は衝突し合い、今日も世界中で戦争や紛争が行われている。

 いつの日か、我々の存在を明かす日が来るかもしれ無いが、それにはまだ時間が掛かる事だろう。

 ネットの動画を見ると、今日も差別主義者がその過激な思想を声高に叫んでいる。

 同じ星の住人同士ですら罵り合うこの有り様なので、私はこの地球人類がエムロード人を発見し、危害を加えやし無いかと、未だに警戒している。

 だからこそ、このお出掛け日和びよりの今日と言う日にも、このボール型の装置を手放して街路を歩く事は出来無いのだ。

 歩きながら、私は小声で歌い出す。

 この世界から戦争が根絶される、いつかその日まで──。

(了)

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