4日目 事件発生。そして――

 血まみれの雨下ふらしを発見した僕は、すぐさま救急車と警察を呼んだ。その間に現場を荒らしてはいけないと思ったのでそのままにしていた――いや、きちんと言おう。初めてのリアルの事件で戸惑い、ただ棒立ちしているしかなかった。彼の近くでシーツが血を吸っているのをただただ見ていることしか出来なかった。

 しかしながら、到着した救急隊員によると、どうやら彼はまだ息があるとのことだ。予断は許さないから病院に搬送するとのことだが……助かって欲しいものだ。

 ブロードスカヤさんはというと、僕から遅れて数分後――救急隊員がきた辺りで同時に部屋に来たようだ。血まみれの彼の姿に動揺し、言葉を失って何も言えない様子だ。それも無理もないだろう。全く赤の他人である僕ですらそうだったのだから、彼女のショックは計り知れない。


 そして――ここからが厄介だった。


 救急隊員が応急処置をしている所で、警察官がやってきた。

 なれば当然、どうしてここにいるのかを説明しなければならなかったのだ。

 Vtuberでネット上の知り合いで相談を受けていて、生放送でピエロに殺されると実際に殺されるということがあって、彼が同じようにならないか心配していたら生放送で殺されたので見に行ったら倒れていた――ということを素直に説明したが、警察官は眉を顰めて話を聞いていた。傍から聞いていたら確かに不審がるだろう。

 僕が怪しすぎる。

 だが必死に説明し、そしてブロードスカヤさんも一緒に説明してくれたので、僕はようやく身柄を解放された。当然、連絡先などは押さえられたが。


 そうやって何やら疲労困憊でブロードスカヤさんとも中途半端に会話して別れて家に戻ってきた。

 疲れてはいたものの、習慣でパソコンの電源をオンにしてSNSを見てしまう。

 ……雨下ふらしのこともその内ニュースになるだろう、いや、もうなっているのか――と確認していたその時。


「嘘……だろ……?」


 入ってきた情報は信じられないモノだった。

 それは、デスBANに殺害された、第一の被害者について。

 週刊誌が報じた被害者であるVtuberの名前。

 それはデスBANに最初に殺害されたヤエギ――


――ではなかったのだ。



代わりに報じられていた名前は――



二番目にデスBANの犠牲になった少女……いや、中の人が分かった今だから言えるが『男性』――『バ美肉』(※)をしていた人物。


 彼がリアルで殺害されていたのだ。

 しかしながらそれには大きな謎が残る。

 とある事実が。


 ――なのだ。



「じゃあ……あの時の『綾胸エリ』は一体何だったんだ……?」


 僕は疑問と困惑により、疲労がピークに達していた――





※バ美肉

 バーチャル美少女受肉の略。美少女の身体を持った、主に男性のことを差す用語。

 ボイスチェンジャーなどで女性のような高い声にする人もいる。


※バ美肉については、実際の綾胸エリさんとは関係ありません。

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