第3章 夏樹の意識と青葉の行動

EP1 夏樹は梅雨の暑さに混乱する

夏服と意識

 夏服にロマンを感じるなんてことはあるだろうか。

 まだ梅雨があけたとは言い切れなくとも、時たま訪れる快晴のものすごい暑い日に俺はそう思う。


 では何故今更になってそんな事思ったのかということを改めて説明しよう。

 そもそも衣替えは結構前にされて学校の中が夏服に染まったのは遠い昔とすら言える。だが、今日のこんな日にふと学校にたどり着いた時の話だ。

 いつもどおりに俺は荷物を自分の席に置いてから青葉の席へと向かって話しかけた。

 その時のことだ。今日は最近の中でも特に暑かったのは、さっきも言ったとおりだが暑ければ何が起こるかと言われたら想像に難くない。

 そう、汗をかくわけだ。それは男女関係なくだ。

 もちろん体質的に汗をかきにくい体質の人間だっているが、そんなことは今はどうだって良い。


 重要なのは現在、俺の目の前で起きている現状だ。

 俺は自分の2つ後ろの席の青葉に話しかけるために、後ろの席のやつに朝は椅子を借りて話していることが多い。というか、この席のやつはいつも遅刻ギリギリだし俺のゲーム友達の1人だから文句は言われない。

 つまり俺は青葉を真正面から見ていることになる。

 そしてこいつは若干夏服のYシャツを着崩している。

 結果的に首元から肩口の肌が見えてしまっていて、そこに汗が流れてるのがみえるわけだ。

 今までは別に下着が透けてようが気にならなかったのに、今更になって何でこんなに目を惹かれているんだろうか。

 あれか。こいつの服装だのを気にし始めたせいか。自分で自分がわからない。


「夏樹どうかしたの?」

「いや……別に特には」

「熱中症?」

「すこぶる元気だ」

「それにしてはあんまり話さないじゃん」

「まあ……なんか素材は集まってきたよな」


 青葉に変に思われたので、イベントの話でお茶を濁す。だが、その前まで何を話していたか正直覚えてない。

 とりあえず視線を青葉の首元から反らした。

 だが、それもまた間違えだと気づくのは数秒後だ。

 視線を下にそらした結果、視線がどこに行くかと言えば胸にいく。

 青葉の胸なんて今まで気にしたことがあっただろうか。自信を持って言えるがない。

 なにせ中学という思春期真っ盛りの時期ですら普通にプールに一緒に行くような仲だぞ。インドアだからあまり回数は行ってはいないが、それでも行くことに慣れば別に恥ずかしいなんて素振りを見せたことはないし、俺も意識なんて全くしなかった。

 むしろ別の知り合いにあって、それが女子だった場合のほうが意識してたくらいだ。


 しかし、今日初めて意識してしまった結果わかったことがある。

 青葉って胸、そこそこあるんだな。

 少なくともラノベとかでよく言うAカップだBがカップだまな板だみたいなことはない。

 近くで見れば膨らみはすぐにわかる程度だ。

 俺は罪悪感からそのまま机に顔というか目を叩きつけた。


「うわっ!? なにやってんの、夏樹!」

「いや、なんかちょっと目を冷やしたくなってな。今日暑いからな」

「意味わかんないんだけど」

「俺も意味わからんから大丈夫だ」

「ほんとに大丈夫なのそれ?」

「問題ない」


 流石にいい感じの衝撃が響いて頭が冷静になった。


「まあそれでイベントの……ってもう時間か」

「うん。まあイベントの生産師の話でしょ?」

「そうそうそれ」

「それは昼でいいんじゃない。光莉にも言っておくから」

「おう。じゃあ金田引きずっていくわ」


 こうして朝のHRが始まった。

 ちなみに、俺の脳裏に微妙に残る青葉の首筋の光景を消すのに数時間を掛けることになって、午前の授業は頭に入ってこなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る