好みのタイプ

 ダンジョン内を鉱石を掘りながら隅々まで探索していく。ガルドのバッグが膨らんでいく反面でアオのMPが少なくなってきた頃、ダンジョンの最深部にたどり着いた。

 ダンジョンの最深部には両開きの大きな扉が存在していてその前がセーフゾーンになっている。この先にいるのは想像しやすいかもしれないがダンジョンボスだ。


「ここのダンジョンボスってガルドはしってるのか?」


 セーフゾーンで休憩しながら、対策を練る。


「なんかもったいない気がしてそこの情報は集めてなかったんだよな。調べたのはあくまで場所だけ」


 気持ちはわからないでもない。事前情報を完全にシャットアウトする人だって多くいる。初見だからこその楽しみは否定出来ないからな。

 俺も正直よほど難しくなければネームドダンジョンは事前情報無しに進みたい。


「そうか。まあただこの感じだと火属性のでかい動物系かゴーレムかの2択な気がするな」


 俺はそういいながら、ひとまず持っていたMP回復系のアイテムを俺はアオに渡した。


「ありがと」

「いやいや、俺だとゴーレムにろくにダメージ与えられないからな。ヒカリさんもナイスパンチだ」

「でしょー!」


 そういいながら拳を見せてくる。VRの格ゲーとかいたらこういう人であふれるんだろうな。今目の前にいるアオとヒカリは改めて見ても対称的な2人だな。


「クール系のアオとキュート系のヒカリってところだよなー」


 ガルドが俺の考えてることを読んだのかそんな事を言いだした。


「ヒカリさんはこうパッションというかそういう元気系と判断に悩むな」

「あー……でもかわいい系じゃね?」

「まあ可愛いけどさ」


 小声で話してたけどどうやら女子2人にも聞かれてしまったらしい。


「いやいや、私可愛いかなー?」

「可愛い可愛い。あ、別にアオが可愛くないとはいってないからな」

「別に何も言ってないけど……いまさらガルドからそう思われたほうが違和感あるし」

「よく俺のことを分かっているじゃないか。ちなみに俺もナツも絶賛彼女募集中だからな!」

「勝手に俺の彼女募集しだすんじゃねえよ」


 俺はガルドに蹴りを入れる。じゃれつき程度のこういう行為は特にペナルティになったりはしない。


「……ナツは彼女欲しいとか思わないの?」

「アオまでどうした珍しいな……まあほしいと思ったことはあるけど、好きなひとできたこともないからな」


 そもそも女子で絡んでるのが青葉ぐらいで、他の子に話しかける必要性にかられたことがないからな。つまりは熱心に好きになったことがないんだと思う。つまり俺は恋をしたことがないのかもしれない。

 まあ変なことを考えるのはさておき本当にこんなことを気にしてくるなんて珍しい。


「ふーん。ちなみにタイプは?」

「ほんとどうした……」

「なんか普段はさないことを話す流れかなって」

「いや、まあたしかにそんな流れに感じなくもないが……お前はどうなんだよ」

「どうってなにが?」

「アオのタイプの男とか?」

「特にそういうこと意識したことない」

「そ、そうか」


 淡々と答えられてしまった。あれ、でもこれごまかされていないか。いや、だけどこれ以上深掘りしてもあれだな。


「ナツは?」

「うーん。まあ、タイプって言われると難しいな。少し考えて見るから今度でいいか?」

「真面目。でも、わかった」

「真面目だねー」


 いつの間にかアオと二人で話してる状態になってきたらヒカリさんが割ってはいってきた。変な空気になりかけてたからナイスだ。


「そろそろいこうよ!」

「そうだな。アオ回復は?」

「終わってる」

「よし、それじゃあ行くか」

「俺は遠くで眺めてるんで3人で頑張ってくれな!」


 ガルドの他力本願宣言を最後に聞いてから俺が戦闘に両開の扉をゆっくりと開いた。

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