グラップラーヒカリ

 装備を整えたアオは銀髪は変わらずだが、少しだけ怪しい雰囲気になった。火属性の魔法使いクラスに変更して手には杖を持つ。ついでに魔法使いの三角帽子だけ余ってたのでプレゼントしたので頭にかぶっている。


「それじゃあ……後一時間くらいだから。軽い依頼受けて終わりにする?」

「あたしはそれでいいけど。ヒカリはそれでいいの?」

「どういう意味できいてるの?」

「いや、もっと遅い時間までガンガンやってるイメージが」

「私は休みの日に多めにやって普段はわりと規則正しい生活してるよ」


 そもそも朝いつも早く起きてるし。そんな深夜まで起き続けてやりこんでたら起きれる自信がない。起きれても夏樹みたいに目に隈ができてたりで目立つかもしれないから嫌だ。


「でも依頼ってどうやって受けるの? ギルドだと簡単とかの判断難しそう」

「NPCから受けられるクエストとかもあるから。私はもう終わってるけど、アオが受けられるのは多いはずだし手伝いなら私もできるの!」

「へえ、じゃあNPCのところまでいこう」

「じゃあついてきてー」


 あたしはそう言ってアオの少し前を歩いて中心地の近くにいるNPCのもとまで移動した。

 たどり着いた先にいるNPCはこの街の武器屋の店主だ。鍛冶生産職の知り合いができなかったりどうしてもお金が別の用途で使っててたまらない場合に安価でそこそこまでの武器が買える。あたしもコノミと出会うまではこの武器屋とNPCの鍛冶師だよりで武器強化してたな。

 あたしは武器屋の中にインテリア風に飾られてる武器を眺めながらアオが依頼を受けるのを待つ。


「受けてきた。ホーンラビットの角5個とウルフの牙3つ」

「おっけい……そういえばさっき囲まれたの倒した時に角は集まっちゃってたりしない?」


 かなり数いたし角は落としやすいから可能性はあるんだけど。

 あたしがそうきいてみるとメニューを開いてアオは確認し始めた。


「……あった。あとホーンラビットの尖った角っていうのも2つあるんだけど。何が違うの?」

「レアリティかな。レアリティが高い素材ほど高く売れたり良いものを作るのに必要になるの。まあホーンラビットのだと作れるものほとんどないから売っちゃうのが良いと思うけどね」


 生産とかが豊富になってくるのはゴルドンを過ぎてからくらいで、その頃からお金も溜まりやすくなって人に生産を頼みやすくなる。


「わかった。とりあえずウルフ狩る?」

「うん。ホーンラビットがいた草原のもう少し奥まですすめば出てくるから……あ、その前に私も装備変えてきていい?」

「大丈夫」

「私のマイルーム見る?」

「……いいなら見たい」


 少し考えてからアオはそういう。ただ、その目は輝いていてやっぱり光莉なんだなと感じ取れるものだった。

 マイルームへと招いて一先ずアオには椅子に座って待っててと言っておく。


「マイルームってどこにいってもこんな感じなの?」


 キョロキョロと部屋の中を見回しながらきいてくる。あたしはメニューを開いて操作しながら話す。


「まあ、何も変えてないならこんな感じだよ。私も部屋の色、多少変えたくらいしかしてないしね」


 クラスを結構前に少しだけ使っただけの拳闘士に変更する。そして装備も胸や急所の部分のみを固く守る皮の防具へと変更。武器は拳を包み込む篭手を両手に装備した。


「ふーん。インテリアとか他に変えたりできる要素ってあるの?」

「クランっていうプレイヤーの集まりみたいなの作れば、クランハウスっていうやつがもらえて、そこぐらいかな。ほかだとガルドが使ってた荷車とかを購入して自分のものにすれば見た目の改造ができるとかくらい」


 グーとパーを繰り返して手の動きを確認する。ウルフ相手ならどうにかなりそう。

 最後に鏡の前にたって見た目を確認。腕がかなり半袖で肌が見えてるけど、上半身は防御パーツがない部分は布で覆われてるから問題ない。ピンク色系の金髪ツインテの格闘ゲームキャラみたいな感じに仕上がった。


「それじゃあ行こう!」

「ヒカリって、なんていうか結構おちゃめだよね」

「い、いきなりなに!?」

「いや、ちょっとゲーム内のヒカリ見てて思っただけ」

「ふ、ふーん……とにかく行くよ!」

「はいはい」


 あたしは少し赤くなっているであろう顔を腕で若干隠しつつマイルームを後にした。

 そんなにはしゃいでたかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る