6-2 Japanese castle【日本のお城】

 目的のお城に着いてからジェシーのテンションはさらに上がる。


「写真で見るのとは全然違いますね! すごく大きくてかっこいいです!」


 お城を囲む濠にかかった橋を渡って、お城の全体を望むとジェシーはパシャパシャと写真を撮る。


「すっごく入り組んでいて迷路みたいで面白いですね!」


 お城の通路は、敵が来たときに容易に侵入できないように、道が入り組んでいたが、その構造がジェシーの心の琴線に触れるようだ。


「おおっ、ここから敵を迎え撃つんですね!」


 天守までの順路の壁には、ところどころに○や□や△の穴が開いている。その穴は銃眼(じゅうがん)と言われて、見張りが外を観察し、敵が来たときには銃を撃つための穴で、ジェシーは屈んで、その穴を覗いてはしゃぐ。


「うわぁ、階段がすごく急ですね!」


 お城の象徴となる大天守に辿り着くと、最上階を目指す。


 道中には首を見上げなければいけないほどの急な階段があったが、ジェシーはその急さを感じさせない軽やかさで階段を登っていく。


 今日もジェシーは、ミニスカートであったから、この角度だと見ちゃいけないものが見えそうになるが……、いや、見ていない。断じて、何も見えていない。


 そもそも、愛が僕とジェシーの間に入っているから、愛のお尻に隠れてジェシーのお尻は見えない。


 愛はこういう場所に来ると分かっていたから動きやすいズボンであり、パンツは見えない。いや、別に愛のパンツが見たいとかそういう欲求があったわけではなく、ただその事実を確認しただけだ。


 最上階まで登ると、ちょっと達成感があるくらいのものであり、ジェシーはうっとりとその内装と外に見えるを楽しんでいたから、小休止も兼ねてしばらく時間をつぶす。


 お城の最上階はとても混雑していて、僕達は体が触れあう程に密着しながら見物をしていた。その状態だと、僕とジェシーの身長差的に、ジェシーを見るとどうしても下を覗くような体勢になってしまう。


 ジェシーは肌を結構露出した服を着ていて、おっぱいの谷間も覗くわけで……。って、いくら僕が少し飽きてきたからといってジェシーは熱心に楽しんでいるのだからそんなことを考えている場合ではない。


「それを読むのは楽しい?」


 今は熱心にこの最上階について説明する案内盤を読むジェシーに話しかける。


「英語が必ずあるのは助かりますね」


 ジェシーが見ていた案内には日本語だけではなく、英語の併記があった。ここだけでなく、お城のほとんどの案内には英語の併記がある。


 案内板だけじゃなくて、ちょうどここにも団体客をツアーして、お城の解説をする日本人の通訳ガイドのような人もちょうど同じ最上階にいて、ジェシーはそれにも聞き耳を立てているようだった。

 

 英語に疎そうな日本でもある程度は、英語で情報を見れるわけで、これが世界のあらゆる場所で共通の傾向であるなら、僕も英語を覚えれば、今のジェシーみたいに異国の地でもいろいろな情報が得られるのかなとなんとなく考える。

 

「ジェシーでも、さすがにここの日本語は難しいの?」

 

「ある程度は読めますけど、ショーグンの名前とかいくつかの漢字はやっぱり難しいですね。もうちょっとこのお城のことも勉強していればよかったです」


「まあ、さすがにジェシーでも難しいのか。でも、ジェシーの知識は外国人としては十分だと思うけどね」


「そんなことないですよ。ここに来る前に少しは調べてきましたが、実際に見てみると違う印象を持つばかりでした。来る前から来たいしていましたが、ここに来れて本当によかったです」


 ジェシーの本当に楽しそうな笑顔を見て、僕はドキドキしてしまう。


「ほら、そろそろ降りるよ」


 お城は、最上階に行くほどにフロアのサイズは小さくなり、それに対して観光客は最上階に留まる時間が一番長い。結果として、人口密度も一番高い。これ以上、留まっていては迷惑になってしまうし、愛に続いて、僕達は階段を降りていく。 


 急勾配で登りでも辛かった階段は、下りだとなおのこときつかった。その勾配は、落ちる人間がいないのかと心配になるほどのものであり、慎重に歩くと疲れが溜まる。登りと違ってジェシーのパンツが見える可能性も無いが、下りではジェシーの金髪が元気よくぷるんぷるん震える姿が見れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る