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 そう言って長塚はちらっと俺を見た。その怠さの姿に追い打ちをかけるように時坂が口を開いた。


「……そう、千冊もあるの……。私達でも魔法というのは使うことは出来ないのかしら?」


「無理だろうね……。普通の人間には魔法を使う事すらできないと言いたいところだけど……」


 スッと起き上がってだらーんと体の脱力をすると、長塚は微笑む。その不気味な微笑が、俺には何を意味しているのかなんとなく察する。


「だけど、時坂さんと桐谷君は、普通の人間ではないだよね。時の住人と未来人。それだけど最初の関門は突破しているんだよ」


「マジかよ……」


 ついカフェオレを落としそうになる。


「そして、二つ目の関門というのは魔法耐性があるかどうか。それは私の家にいかないと分からない」


「そして、お前はこう思う。魔法があったところでこの世界で勝手に使ってもいいものではない。それよりもまだその先の関門がある」


「へぇー、そんな所まで頭が働くんだ……」


「私も驚いたわ。あなたの頭の良さに……」


 時坂は目を大きく開け驚き、長塚は俺を見ては目を細め、関心したように俺を見降ろした。


 うるせぇ。


 でも確かにこの頃、俺の頭の回転率の効率がいつもよりいい感じになってきているような気がしている。これはもしかすると俺の感違いなのかもしれない。


「じゃあ、その次の関門へと行くとするか」


「じゃあ、魔女の森へ招待するわ」


 長塚は立ち上がった。


「この二人はもう……それでここからどうやって移動するの?」


 時坂が言うように窓の外を見ると、いつの間にか天気は荒れていた。さっきまで雲一つもない快晴だったはずの空は薄黒い雨雲で埋まっていた。そして、雨が激しく降り続いている。本当に歩いて行けるとは思っていない。


 そして、俺は何も傘など持ってきてもいなかった。車は運転できない。雨を凌ぐ道具を持っていない。



     ×     ×     ×



 長塚の家は古い一軒家だった。それは女子高校生が住むには少し抵抗のある家であった。

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