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「お前がアーサーの主であるミラか。感謝しよう。ここまで奴の力を使って良く戦ってくれた」


「あ、あなたはもしかして……炎帝竜ジークフリート————なぜ、竜二りゅうじと一緒にいるの? あなたは人間が嫌いなはず、それに姿をこんな所で現すとはね……」


「それは人の憶測だろ? 私は一度たりとも人間嫌いと言った覚えはない。むしろ、それは中にそのような竜はいる。他の帝竜にも同じような奴はいる……」


 ミラの問いかけにも、ジークフリートは涼しい表情で黒き竜を見る。


「まぁ、今の竜たち、他の神や悪魔などの種族もまた、意見は二つに分かれている。それよりも竜二、その娘を抱えて山を下りろ。ここからは私、炎帝竜が相手をしよう」


「お前、何を言って……」


 目を丸くして、言葉を詰まらせる。


 ギャァアアアアアアアアアア!


 ————なんだ、この声は!


 二体の竜以外の声が聞こえてくる。その鳴き声はものすごい重圧がかかっている。


 双竜の宙に舞うもう一体に竜、水色と青色が混じった羽がはっきりと見える。


 ————おい、おい……なんで三体目の竜が現れるんだよ。


 炎帝竜より少し小柄な体型の竜は曇天どうてんの空からこちらを見下ろしている。


 あれはもしかして水の竜、炎帝竜とは対になる水帝竜すいていりゅう。昨日、サーシャの部屋で竜についての本を読んだときにたまたま見た中にいた竜だ。


 だが、少し違う。水帝竜に似ているがどこか似ていない。


 ジークフリートはその青き竜を見上げながら口を開く。中から炎が漏れてくる。


 だが、青き竜は容赦なく攻撃態勢に入っている様子だ。水の魔法、火の魔法には強力な魔法だ。相性が悪い。


「————あれって、まさか……」


 その大きな翼に水の魔法が加わり、急降下してくる。

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