第四話 11-13


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 そして……二日目の『ぽろりもあるよ! 〝アキバ系〟大クイズ大会』がやってきた。


 参加者は臨時参加の俺たちを加えた七組十四名。


 出題テーマには、予想通りサプライズはなかった。


 今期の〝アキバ系〟全般。


『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』に関する問題も、それ以外も、等しく出題されていく。


「──それでは第三問、『魔法少女ドジっ娘マホちゃん』の第三話で使われたマジカルアイテムは、何であるか?」


「え、ええと……マジカルキリンググレネードランチャーのはずです」


 がフリップに解答を書きこむ。


「──続いて第五問、『ぬるカン』の第五話で撫子なでしこの飲んでいた日本酒の種類は何でしょうか?」


「これはあれだ、確かだ」


 こっちは俺が答えを書きこむ。


『マホちゃん』に関するものはが、それ以外のものは俺が主に担当して解答していく。


さわむらさん……すごいです。いつに間にこんな……」


「カバーするって言った以上はこれくらい役に立たないと。『マホちゃん』以外は任せてもらって大丈夫だから」


 これは昨日ざか邸から帰宅してから、『クレイジーハブマムシZ(栄養ドリンク)』を飲みながら徹夜で覚えこんできた成果だ。


 もちろん普通にただ闇雲に覚えようとするだけでは無理だっただろう。『マホちゃん』以外のジャンルは今期のアニメだけでも五十本はある。その膨大な量の知識を、いくら徹夜したからって俺の百円スポンジみたいな頭で覚えられるわけがない。


 


「──第十二問、『マホちゃん』の第七話のアバンでコモドオオトカゲタイプのクリムゾンが食べていたものは何か?」


「これはドリアンです……!」


「──第十六問、『サラマンダー』で主人公が三番目に使った忍術は?」


「口寄せの術だ……!」


 進んでいく出題。


 時々俺は間違えることもあったけど、何とか七割くらいの正答率は保てたと思う(ちなみには十割だった)。


 そして──


「──それではこれが最後の問題だ。『マホちゃん』の第二話で、ピアニッシモちゃんがマホちゃんを助けた時に、本棚から取ろうとしていた魔導書は何か?」


さわむらさん……!」


「ああ」


 と二人でうなずき合う。


 この問題を……俺たちが間違えるはずがない。


「「『シークレット・フェイス』……!」」


 そう声を合わせながらフリップに解答を書きこんだ。




「──おめでとう、優勝はざかさわむらペアだ。皆、二人の健闘に拍手と声援を贈ってあげてくれたまえ……!」




「や──やりました、さわむらさん……! 優勝です……っ……」


「あ、ああ……っ……!」


 と手を取り合って喜ぶ。


 辺りからは、割れんばかりの歓声が響き渡っていたのだった。






「おめでとうございます、やりましたな、ざかさん!」


「圧倒的な正解率でしたよ!」


「見事という他ないっす……!」


「あ、ありがとうございます。おかげさまで何とか……」


 無事に『ぽろりもあるよ! 〝アキバ系〟大クイズ大会』が終わり、舞台袖ではが三Kやたくさんの他の生徒たちに取り囲まれていた。


 心の底からあんしたような微笑ほほえみを浮かべながら、色々と質問に答えている。


 ふう……とりあえず何とかなったみたいだし、一段落かな。


 そんな風に胸をなで下ろす中、


「おめでとうー、よしー!」


ふゆ……」


 そう声をかけてきたのは、小さく手を振るおさなみだった。


ざかさんもだったけど、よしもすごかったよー。まさかあそこまで大活躍するなんて思わなかったー」


「や、これもふゆのおかげというか……」


 その言葉に、ちょっとだけ複雑そうな表情で笑って、ふゆが言った。


「参考書……ざかさんに渡さなかったんだねー」


「あ、うん」


「そっかー。うん、まあよしなら、何となくそうするんじゃないかって思ったけどー」


 そう言って屈託なく笑う。


「その、悪かったな。せっかく用意してくれたのに」


「ううん、いいよー。どう使うかはよしの自由だしー」


「でも本当に助かった。これがなかったら、たぶん優勝できなかった」


 ズボンの後ろポケットから一冊の小さなノートを取り出す。


 これは昨日……ふゆから受け取ったものだ。

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