第43話★本当の気持ち〜side翔〜本編バレンタイン



いつから君を一人の女の子として意識するようになったのか、それは自分でもわからない。


妹の友達。

俺にとって彼女は第二の妹のような存在だった。

……確かにそう思っていた。


でも、気が付けば好きになっていた。


今までの経験から、俺は誰と付き合ってもどうしても花音を優先してしまう。

これはこの先も一生変わらない。そう思う。


小さくて弱いくせにどこか無鉄砲で、その無邪気さが酷く不安なのだ。

変な男に騙されやしないか、危険な目に遭ってやいないか、いつも心配で目が離せない。


おまけに彼氏はあの響だ。


これでも一応、響の事は信用している。

あいつは絶対に花音を傷付けるような事はしない。


でも、響は少し……いや、だいぶ変なやつだから、やっぱり花音の事が心配で放っておく事はできない。


だから……

俺は自分の気持ちに蓋をした。


彼女を一番に優先してあげられないなら、自分から告白なんてするもんじゃない。

何より、失うのが怖かった。


大切にできずに失うぐらいなら、この気持ちは一生自分の胸に秘めておこう。

そう思っていたーー。


「……これ……ね、本命だから」

「え……? 」


目の前に差し出された綺麗に包装されたチョコを見つめ、思いもよらない突然の出来事に一瞬固まる。


「……俺は花音が一番に優先なんだ」


俺の口から、ポツリと無意識に小さく溢れた言葉。


それを聞いた彩奈は、悲しそうな顔をして小さく微笑むと、俺に向けて差し出した手を引っ込めた。


「うん……そっか。そうだよね、やっぱり迷惑だよね。ごめん、今のは忘れて」


ーーー!


立ち去ろうとする彩奈の手をグイッと掴むと、驚いた顔をする彩奈が俺を見上げる。


「いや……だから、そうじゃなくて……。俺は彩奈の事が好きなんだ。でも、やっぱり花音の事を優先してしまうと思う。だから……彩奈を悲しませて失いたくない」


彩奈の言動に触発され、俺は告げるはずではなかった胸の内をさらけ出した。


すると、涙を浮かべた瞳でニッコリと微笑んだ彩奈。


「なんだ、そんな事……。何年一緒にいると思ってるの? 」


そう言って微笑んだ彩奈はとても綺麗で……。


まるで時間ときが止まったかのように、俺は彼女に見惚れてしまったんだーー。





ーー完ーー


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