メコン川に沈む象使いの夢

ニット

第1話 そうだ、ラオスに行こう

 ラオス旅行から帰国して数日がたったある日、友人との話の中で「どうしてラオスに行こうと思ったんですか?」と聞かれることがあった。さて、なぜラオスにしたのだろう?改めて問われてみると、自分でもはっきりしない。ほぼ勢いだけで決めたような気もするが、きっと何か考えがあったはずだと思い、あらためて旅行を決めた10月下旬の日を振り返ってみた。


 10月下旬から11月にかけての時期、例年ならば毎週末の予定はほぼ迷う必要はなかった。理由は単純で、和歌山県にあるポルトヨーロッパで開催されるプリキュアのアクションステージを見に行くからだ。このショーについての詳細は割愛するが、とにかく素晴らしいステージであり、ゴールデンウィークに品川プリンスホテルで行われるショーや夏休みに池袋サンシャインシティで開催されるイベントとともに毎年恒例の楽しみにしているものだった。しかし、今年は違った。秋のポルトヨーロッパのアクションステージが開催されなかったのだ。

 

 秋の週末予定がポッカリ空いてしまい寂しい気持ちを抱えながら、ひとりで電車に乗っていた。電車移動中はスマホの画面を見つめていることが多く、電子書籍を読んでいることもあれば、LINEやtwitterを眺めていることもある。その日はなんとなくエクスペディアのアプリを弄っていた。目的地や日程が決まっていたわけではないが、なんとなく頭に浮かんできた地名を目的地にして航空券の価格や所要時間を見比べながら、旅行に行くならどうするかといったことを思い浮かべるのは楽しいものだ。


 そんなことをして時間をつぶしていると、妙に安い一つの航空券が目にとまった。行先はラオス。ラオスという国名から、以前多国籍なメンバーで構成されたチームで働いていた時のことを思い出した。タイ、ベトナム、フィリピン、カンボジア、インドなど東南アジア系のメンバーが多かったそのチームで、自分の国の観光名所という話で盛り上がったときのことだった。ラオス出身のメンバーが「ラオスには観光名所っぽいところはあんまりないけど、そのぶん海外から人があんまり来てないから昔ながらのアジアの風景がみられるよ」と話していた。

 

 航空券が安かったこと、短期滞在ならビザ取得が不要なこと、そして「昔ながらのアジアに出会える」という言葉に後押しされる形で、ラオスに行くことを決意したのだった。

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