エピローグ 循環する森の命
あれから数日が過ぎ、ルロイは平穏な日常のありがたみを味わっていた。
今日も午後のティータイムを楽しもうとカップに手を付けようとした時である。
「ヒャッハー!元気にしてっか、ロイ!!」
「ギャリックさん!……その、どうしてここが?」
嫌な予感と言うのは、どうしてこう残酷なほどに当たってしまうものだろうか。しかも、気安くロイとか短縮形の愛称で馴れ馴れしく呼ばれてるし。
「おう、あれからな、しばらくルーポの村で
「はぁ……」
「で元々、俺は冒険者だからよ。本業に戻ったって訳さ」
「それはまぁ、良かったですね」
紅茶を冷ましてちびちび飲みながら、ルロイはギャリックの話を聞き流している。が、流石にボドをはじめとしたルーポの村の人々が気がかりではある。そんなルロイの心情を察してかギャリックは、含み笑いを浮かべルロイの肩をたたく。
「あれから、ルーポ村の小麦の実入りは良くなってる。ボドのとっつあんもどうにか元気に暮らしてるぜ。それに、新しく就任した行政官とも上手くやっているらしいじゃねぇか。丸く収まったってことでいいんじゃねぇか」
「それは良かった」
「村の爺さんらに聞いたんがよ」
「はい」
「村に言い伝えには続きがあってだな、狼男が食らったものは森の養分になって次の農耕の農地の肥やしになるんだと。つまり、家畜や作物を食い荒らして回った狼男は最後にその命さえも自然そのものに返すんだと。つまり、自分が奪ってきた命もその土地に循環させるってこった」
「ギャリックさん……」
ギャリックからこんな感傷的な話を聞かされるとは、ルロイも思ってはいなかった。ようやく、これでよかったのだと思える。
「あーそれでよ、村全体の農作物の実入りもこの秋中々良いそうでな、それでレッジョのお偉方も考えを改めたらしい」
「例の森林開拓の件ですか」
「ああ、農業生産と税収さあえ上がれば土地の権益を手放す必要はねぇだろうよ。俺は文字なんて読めねぇから、難しいこた分かんねぇ。でもよ、もしかしたらのあのライカンスロープ、本当にあの村の神様だったのかもしれねぇな。本当に森と村を守っちまいやがった」
「因果なものですね」
「まったく、俺たちも結果として手玉に取られちまった訳だし。俺が剣を交えたあいつは本当に大した奴だった……」
戦闘狂らしかぬ寂しさと
今回の件を通して、ギャリックもまた自らを見つめ何かに気づくことが来たのかもしれない。自分より遥かに大いなる存在に人は謙虚にならざる負えない時がきっとある。
「つー、事でだ……」
「もう一度、今度は別の森に狩りに行こうや、いや、山でも沼でもいいぞ。主がいるんならなどこでもいい。その土地の主と殺りあうのは
「勘弁してください!!」
そして、ルロイの嫌な予感は常々当たる。
戦馬鹿に精神的成長など期待した自分が一番救いようがない馬鹿かもしれない。などと、もはや冗談にさえ使えないのである。
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