第34話 触手だからってやられっぱなしで反撃しないとは思うなよ


 俺がメシにありつき、半分くらい食べていた時だ。伝令が駆け込んできた。俺はメシ食ってんだから後にしてほしい。他の連中はさっさとメシを食い終わり思い思いに何かやっている。


「メシ食ってるから後にしてくれないか?」

「レナード様との連絡は皆様は取れますか?」

「そりゃ取れるが」

「大臣が、いつ培養細胞が用意できるかを聞いてほしいとのことです」


 俺はメシ食ってんだよ。レナードへの連絡は他のメンバーに頼むわ。メシ食うときはメシに集中させてくれよ。


「ブレン、頼むぞ」

「わかった。レナードもこいつで連絡取れるからな」


 被害者の会プレートを使って、ブレンがレナードに連絡を取る。レナードからはあと3日後には用意できるとのことだ。それなら特に問題はないが。


『培養細胞と戦力を輸送するために軌道塔の輸送機は全部下ろす』

「それくらいは必要だろうな」


 あと3日後に戦力を学園都市に集中させることができるかどうかが、一番重要なところである。そのためには、戦力を輸送できる方法の確保は必須だろう。


「よし、よろしく頼むぞ」

『当日は俺も向かう』


 レナードが来てくれるならありがたい。少なくともあの大臣説得するのは非常にやりやすい。


「それと、皆様におきましては軍議の間に集まっていただけますか?」

「それは構わぬが……」


 どうしたんだ始祖?何か気になることがあるだろうか。


「そもそも妾たちが何かできること、あるのか?」


 ……実際のところ培養細胞渡したらそれで終わりだよな……。簡単に挨拶だけしたらあとは当日まで待つだけか。兵たちが怪訝な顔で俺を見ている。そりゃ俺は触手だからな。へんな顔をされても仕方ない。簡単に打ち合わせを済ませる。このためだけに俺たちはここに来たのか。まあそういうものなのかもしれないけどな。


 王城を出たあと、宿を取ることにした。今日こそブレンたちとも始祖たちとも離れた部屋で寝るぞ!これで!俺は!自由だ!と夢の中に旅立った。


 翌日。久しぶりにぐっすり寝られた。その日一日色々消耗品を買うなど準備に費やし、いよいよ反攻の準備が整った。兵力の再編も行われたようだし、明日は圧倒的な勝利を収めたいところである。


 次の日。


 俺たちは首都を後にした。後続の軍隊が追いかけてくる。将軍が兵隊達に檄を飛ばす


「いいな!これから我々は死地に向かう!だが!無駄には死ぬな!この戦いに勝利するぞ!」


 鬨の声が上がる。それと同時に飛行カプセルが空に現れる。ピストン輸送で兵達と俺たちを液体の前に移動させた。


 着くと同時に皆触手の培養細胞に浸された武器を手にとる。怒涛の勢いで液体に襲いかかる。そこにはエルフがいる。兵士がいる。アンデッドが、フェニックスが、ドラグニュートが液体に向かって攻撃を開始している。凄い光景である。


 俺の培養細胞は、たしかに効果があるようだ。明確に凄い勢いで液体が蒸発していく。逆に液体はこちらに近寄れないようで、どんどんとその範囲を縮小している。いいぞいいぞ。


 そうやって液体を退けた部分から、人間や生物が現れ始めた。……生きている!?


「おい!みんなまだ生きてるぞ!」

「触手の培養細胞とやらを使えば完全に追い出せるぞ!」


 飲み込まれてからかなり時間が経っているはずなのに、生きている。エウロパが腕を組んで考えてこんでいる。


「おかしいよ!液体に捕まってから一週間だよ!どういうこと?」

「エウロパ、考えるのは後だ。とにかく液体を退けるぞ!」

「う、うん!」


 ブレンがエウロパと共に液体を退け続けている。こういう時には考えないという性格はプラスだ。


 どんどん攻め込んでいく世界連合軍。液体はいよいよ学園都市の範囲にまで収まってきた。予想以上に早く奪還できそうだ。合流していたレナードが急に言い出す。


「俺はちょっとやることがある。一度離れていいか?」

「大丈夫だろう」


 レナードが何処かに飛び立っていった。それより俺たちはこの都市の奪還だ。俺も触手を振り回して液体を退ける。


「ここまで来たのか!」

「お前は!」


 紫のゴブリンが現れた。しかしゴブリンなど一撃のはずではなかろうか?兵士の一人が攻撃する。袈裟懸けに斬り捨てる。


「やったか!?」


 紫のゴブリンは、たしかに上半身と下半身に分断されたはずだ。しかし、そこから紫ゴブリンが生えてきた。そして液体と合流する。


「やっぱりそういうことか!」

「どういうことだ触手!?」

「紫の液体、こいつ自体が意思がある。紫ゴブリンはこの液体が本体か!」


 紫の液体が暴れ始めた。だがな!俺の触手を喰らうがいい!液体は俺の触手に弱いのには違いがないだろうが。


 そのままペチペチと液体を触手で叩きつける。紫ゴブリンもぶっ叩く。とにかく叩きつける。紫ゴブリンの下半身が蒸発し始めた。


「や。やめろぉ!」

「お前はそのまま蒸発していけ」


 紫ゴブリンの上半身にも触手をぶつける。上半身の液体も蒸発し……最終的に上下半身が切断されたゴブリンだけがここに残った。そのままゴブリンは絶命した。……復讐はあっさり終わった。


 液体はまだまだ残っている。この調子で行くと、液体は都市から無くなることだろうな。だがなんだろう、上手く言えないがすごく不安だ









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