第26話 触手だからって状況が急激に変わるのについていけると思うなよ


 塔を登ったら機械の中から人間のメスが出てきた。それはまあいいとしよう。いいのか?いいんだよ。気になる単語が出てきた。。たしかにこの人間のメスはそういったな。


「レナードだったか?」

「なんだ?」

「サーバーにある情報って取れるのかよ」

「取れるもなにも、そこに俺の本体の情報がある」

「本体……本体とはなんだろう」


 たしかになブレン。情報だけの存在というのがあるとでも言うのか?理解しがたい。


「それはよいわ。妾たちをお前はなぜ攻撃してきた?」

「それについては謝罪せねばならないな。しかしここも非常にまずい状況になっているのを理解してほしい」

「どういうこと?ぼくにもわかるように教えてほしい」


 レナードは、数歩歩いて謎の卵のようなものを指差す。


「そもそも数ヶ月前、ここにこの謎の物体が宇宙から衝突したことがきっかけだ。この物体の中から紫色のよくわからない人型の物体が現れて、サーバーに対しての攻撃を始めた」

「サーバーに対しての攻撃?なんでそんなことを?」

「どうやら狙いはサーバーの中身、つまりは情報だったようだ」


 ある意味俺たちと一緒ってことか?そうなるとその宇宙からの物体は、一体何が狙いなんだ?


「そいつはサーバーの中身を弄ってデータの一部を複製し、更に機械をコントロールしつつなにかの紫の小さな人型の生物を作ったようだ。そして地上に降りていった」

「紫ゴブリンか……ここで話がつながってきたな」

「そうだなブレン」


 副会長として、そろそろ紫ゴブリンとは決着をつけるべきなのだ俺たちは。


「地上では結構むちゃくちゃなことが起きているよ。クラーケンを洗脳して女の子に卵産みつけさせようとしたり、ヴァンパイアやフェニックスを洗脳したりね」

「俺も下手したら洗脳されてたかもしれないな」

「洗脳とはなんだ?」


 レナードが俺に近づいてきた。ん?何か俺についているのか?


「バイコーンのツノを基にした、生物を洗脳する寄生生物じゃ」

「バイコーン!?それをベースにしたのか……なるほどな。……ちょっと待て。その触手生物……おい、まだこんなのいたのか!?」

「何をいうんだよいきなり」

「旧世界の大戦前の戦闘支援生物じゃないか!?しかもこいつしゃべれるだと!?おいこれ……そうか。洗脳しようとしたのかこいつも!」


 驚愕の事実だ。俺も洗脳されて変なことをしていたのか!?少なくとも性的には変なことはしていないと思うが。


「俺も洗脳されているのか?」

「洗脳……洗脳の定義によるが、されているといえばされているし、されていないといえばされていないと言える」

「どういうことだよ」


 そうだよなブレン。もったいぶらずにきちんと言ってくれレナード。


「言語を理解したり、高度な知的行動を行えるのも一種の洗脳の結果だと言える。一方で性的嗜好については、洗脳のための寄生生物がおかしなことになっている」

「どういうことだ?」

「平たくいうとお前の同一種に対する性的願望が強すぎて、洗脳が負けた」


 なんだよそれ。俺が性欲強すぎみたいじゃないか。


「洗脳では何をしようとしていたんだ?」

「人間を陵辱とかだろうな。特に人間の女性を」

「うわぁ……絶対イヤだぞそれだけは」

「ぼく、何かされてもイヤだけど、そこまで頑なにイヤがられるのもイヤだ」


 逆の立場で考えろよエウロパ。イヤに決まってるだろそれ!?きちんとイヤだとはっきり言えよ人類!触手だからって女の子とHなことがしたいとは思うなよ!


「そんな趣味でもあるのかよエウロパ!?ブレン、こいつを止めろよ」

「触手、多分そうじゃないわよ」

「どういうことだファブリー?」

「人間って、社会性の動物じゃない。だから何か頑なに否定されるのって、それがたとえイヤなことであっても何かイヤなのよ」

「そういうものなのか?」

「うん、ぼくの言いたいこと代弁してくれた」


 何かめんどくさい生き物だなぁ人間。好みでもない相手に、いやらしいことなんてされない方がいいだろうがよ。


「確か人間の祖先の猿の一種に、性行為でコミュニケーションをとる種が存在したな」

「繁殖のためじゃないのか!?鮭なら死んでるぞそれ!」


 思わず俺は叫ぶ。変な猿だな全く。そしてその方向性の一部は人間も引き継いでいるのではないか?


「十分な食料と気候のいい安全な場所があることで、種内のストレスを闘争ではなく性行為で発散する方向に進化しているようだ」

「だとしてもだ。別種は関係ないだろ別種は」

「ある種の生物は自慰行為に別種の生物を使うらしい」

「やめろよレナード……」


 全身が痛くなってきた。俺の脳は全体にあるからこうもなる。まさかとは思うがエウロパって繁殖欲求強すぎて、ブレンのブレンが早く復活しないとヤバいんじゃ……いててててて知ってたけどそんなわけないのはな!


「そりゃブレンのブレンがフェニックスのごとく復活してもらわないと、長い目で見たらぼくすごく困るからね」

「ごもっともだ。さてレナード、ここにいるメンバーだが、特にブレンたちと始祖たちだな。性に関する問題抱えている」

「どういう問題だ?」

「ブレンは性的不能すでにしんでいる、始祖たちは不妊に悩んでいる」

「なるほどな。それでサーバーの情報が欲しいと。ふむ。なら俺も情報だけでなくついていく必要があるかもな」


 レナードもか?なんでだよ。


「ここでできることは限られているからな。地上の中央サーバーが生きているようだし、そこで治療法を確立する必要がある」

「中央サーバー?」

「ほら、湖のほとりにある……」

「図書館か!?なら目的地は一緒だぞ」


 レナードが目を丸くする。どうやら皆の目的は一緒のようだ。


「中央サーバー付近の都市を魔物たちが占拠しているのは、ひょっとしたら情報が狙いなのかな?」

「おそらくなエウロパ。しかしこうなったらみんなで行くしかないな図書館へ」

「うん。でも図書館へは学園都市経由しないといけないし魔族が占拠しているよ」


 レナードが妙な笑みを浮かべている。こういう奴のこういう笑み、絶対悪いことが起きる悪寒がする。


「それならいい方法がある。学園都市ではなく、直接図書館の付近の湖目指せばいい」

「どうするんだよレナード」

「ここに着陸のための大気圏再突入カプセルがある」


 大気圏再突入?不穏な単語だが。


「なーに数分外部温度が数千度になって湖で冷えるだけだから大丈夫大丈夫」

「何が大丈夫だ!」


 ブレンがブチギレているが気持ちはよくわかる。焼き触手、焼き人間、焼きドラゴン、そして焼きヴァンパイアとか誰も食べたくないだろ。


「心配すんな、さあ乗った乗った!」

「えっおいちょっと」

「やだよぼく怖いよぉ!!」


 俺たちが悲鳴をあげながらも再突入カプセルとやらに全員乗った。椅子に座ると同時に、ガコン!という鈍い音がした。暗かった周囲が赤くなっている!おいこれどういうことだよ燃えてるよ落ちてるよ!!死ぬぅ!!!

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