第5話 冒険者

「これだ!!」


 そうだ冒険者だ!

 冒険者なら鍛治との兼業をしながらできる仕事じゃないか!


 俺はこの喜びの勢いのまま冒険者組合の扉を開けた.........が、ゆっくりとその扉を閉めた。

 なんでかって?

 だって、扉開けた瞬間組合内にいた人全員が俺のことを見てきたんだぞ!

 とはいえ、このままでは先に進めないので勇気を出してもう一度扉を開けた。

 するとさっきと同じように組合内にいた冒険者と思われる人たちの視線が一気に俺に向けられた。

 俺はその無数にある視線に耐えながら扉正面奥に配置されている受付へと足を進めた。


「ようこそ、冒険者組合へ。依頼人の方ですか?」


 受付で対応してくれたのはよくライトノベルとかで出てくるようなすごく美人の受付嬢というのではなく、どことなく愛嬌のあるそばかすが特徴の前世でいえば高校生くらいの年齢だと思われる人当たりが良さそうな女の子(ドヴェルグではなくこの世界における人間に該当する種族)だった。


「いえ、依頼じゃなくて冒険者登録をしたいのですが.....」


「すみませんが、年齢を確認させてもよろしいでしょうか?他種族の方ですと見た目では年齢が判別できないもので。何か年齢を確認できるものはありますか?」


 女の子は申し訳なさそうに少し頭を下げた後そう言った。

 確かにドヴェルグだと15歳でも髭もじゃで外見年齢だけだと低く見ても30歳以上には普通見えるからな。

 それにエルフとかは10歳くらいに見えても100歳超えてるとか普通にあるらしいし。

 俺はアイリヒから持ってきた市民証を提示した後、受付の女の子が取り出した必要書類に氏名や年齢などの必須事項をつらつらと書きながらそんなことを考えていた。


「できました。」


「では、確認させていただきます。.........確認しました。アイリヒ町のトルゲさんですね。では、冒険者証を発行します。銀貨3枚掛かりますので用意をしてしばらくお待ちください。」


 そう言うと受付の女の子は奥に引っ込んでしまった。

 しばらく受付で待っていると応対した女の子とは別の女性(こちらもさっきの女の子と同じ種族)が冒険者証らしき紐にぶら下がっている板を持ちながら奥から出てきた。


「お待たせいたしました。こちらがトルゲさんの冒険者証になります。」


 女性が見せた冒険者証は楕円形の鉄でできた名札ネームタグのようなものでそこにトルゲと俺の名前と種族、そして発行年と発行場所が彫られた簡素なものだった。


「これが冒険者証か。結構簡素なんだな。」


「冒険者になる方は皆そう言われますね。」


「すみません。」


「いえいえ、事実ですから。それで、トルゲさん何か質問はございますか?」


 受付の女性は俺の失言に苦笑しながらそう言った。


「あの、登録してからで恥かしいのですが冒険者組合の仕組みとかそういったものを教えてもらって良いですか?」


「説明は受けていませんでしたか?」


 受付の女性は組合の説明を受けてから冒険者登録をしたと思っていたようでとても驚いていた。

 まあ、登録するんだから事前に説明なり概要なりは聞いてるもんだと思うのが普通だよなあ。


「はい。」


「それは誠に申し訳ございませんでした。」


 受付の女性は深々と申し訳なさそうに謝罪をした後、冒険者組合について説明を開始した。

 説明によると冒険者組合とは各国に支部があり、本部はここから西の方にあるそうだ。

 そして冒険者組合の役割としては組合のある国が予算を割いて活動することのできないような魔物の駆除や商人の護衛などの仕事を組合に所属している冒険者に斡旋することだと言われた。

 それと前世のライトノベルに出てくるランク制度はないようだ。

 ようは冒険者とは前世でいうところの派遣社員や日雇い労働者にあたり、冒険者組合とはそれら労働者に仕事を斡旋する組織であるということである。


「以上が冒険者組合の説明になりますがよろしいでしょうか?」


「なるほど、わかりました。」


「では、早速依頼を請けられますか?」


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