【第二部】第五章「警察官のオヤジ」



 しばらく経ち、またまずいことが起こった。俺を撮った何枚かの写真がネットに出回っているようだ。密輸の貿易責任者だった益田が、「俺の悪行」をネット動画サイトに流したようで、ネットが炎上していた。俺はマスコミや数人の警察官をわいろで揉み込んだ。損失が痛かったが、仕方ないな。無論、社内でも噂が流れていたが、俺は笑顔を絶やすことを忘れなかった。




 「……社長!どういうことですか?大麻の密輸があるって、ネットで見たんですが」


 経理課の女が俺に食って掛かってきた。ちょっと面倒だった。だが、こういうときこそ平常心だ。


 「いやー、どっかで悪い噂が立ってるかもしれないねぇ。でも大丈夫だよ。頑張ってれば、優良会社として認めてもらえるはずさ。経理課の業績は誇りだよ。これからもよろしくねー」


 女はなんとも言えない表情で黙っていた。喫煙室にいる男達もちょっと噂してるな。少し世間を買収して、いい噂を流しておこう。益田め、覚えてろよ……。




**


 しかし、尻尾を掴んだ警察官が一人いたようだ。俺が鏑木港で深夜帯に、荷下ろしをしていると、赤外線カメラで写真を撮られていたのを、俺の仲間が気付いたようだ。数人見張りを付けて、囲い込んで、縄で縛った。そいつは四十代くらいの親父だった。




 「……おい、そのカメラをさっさとよこしな!」


 「うるせぇ!お前らみたいな奴らに、なにが分かるんだよ!違法なものを日本に入れやがって」


 麻薬の取引現場を見られた、「密売人の赤木」は警察官のオヤジに激怒して、警察官のオヤジをぼこぼこにリンチして殴った。しかし「カメラの画像データ」は既に警察本庁に行っていたらしく、俺らがオヤジを海に投げ込もうとしたとき、間一髪で警察官が来て、俺以外の、赤木含む三人の売人は逮捕された。俺は間一髪で難を逃れた。しかし面倒だったので、その警察官のオヤジを俺は始末することにした。




 「……ほう、馬場 明正(ばば あきまさ)っていうのか。家族構成は妻と娘と息子か。微笑ましいねぇ。壊しがいがあるねぇ」


 俺は忙しかったので「殺しのプロ」に依頼し、警察官のオヤジが一人で歩いているところを拉致して、再び鏑木港で「海に沈めたのだった。この一件を片付けるのにも、かなりの金が出て行ったようだ。あーあ、また稼がないと。俺もなかなか休まらないわぁ。本当にな。人気もんは大変だぜ。

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