最前線の魔法鍛冶師

佐貫未来

第一章(上) ピッピの日常

第1話 魔法応用学概論

 魔法と聞いて何を思い浮かべるかい?初歩魔術師がみな最初に教わる「ファイアボール」や回復魔法の「ヒール」はもちろん、炎系広範囲最強魔法「インフェルノ」や、氷雪系単体滅殺魔法「アイスクライシス」など上位攻撃魔法なんてのもあるね。しかし、この世界ではそんな戦闘用魔法だけでなく、もっと生活に身近な魔法にあふれている。


 料理で起こす際の火は、さっき挙げた「ファイアボール」を、魔力を持たない人間にも行使できるように小規模なもののにダウンサイジングし、魔力石に込めた魔術式をスイッチ1つで発動できるようにしたものだ。


 人々が口にする飲み水はもっと単純に井戸水や河川の水に聖なる祈りである「ヒール」がかけられたものになっているし、そのための浄水施設にはヒーラーと呼ばれる魔術師が最低一人は常駐している。そう、これくらい魔法は生活に身近なものになっている。


 さて、もう1つ質問だ。「鍛冶」と聞くとどんな光景を思い浮かべるだろうか?多くは、大きな炎に金属を挿しいれ、ハンマーと金槌でトンテンカンテン叩いているんじゃないかな?

 これは半分正解だ。この伝統的な鍛冶法は「ドワーフ鍛冶」と呼ばれ、屈強な体を持ち金属の扱いに長けたドワーフ族が生業としている方法である。


 さて、もう半分は?と聞かれると勘のいい者なら察しがついていると思う。

 

 そう、それが「魔法鍛冶」だ。

 

 これは魔法を用い、金属の性質を読み取った上でそれを魔術式によって改変、精製する方法である。「魔法鍛冶」の大きな特徴は、その詳しい製法は魔法鍛冶師それぞれに異なり、秘匿されているということだ。

 「ドワーフ鍛冶」ほど単純ではないということだね。

 詳しい事はそうだな…実際に魔法鍛冶を営んでいる「レイヴン」に聞いてみるといい。

 ―おや、時間だな。以上で「魔法応用学概論」の講義を終了するよ。

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