剣聖2

先生

「だめじゃ!その軟弱な腰の入れかたは!」

 

アクア

「はい!すみません!」

 

いきなり特訓だ!と言われあれからどれくらい経ったのだろうか、

素振りをしながら剣に謝っているアクアさん、

剣に尻を叩かれながら小槍を振る俺なんともおかしな絵……

 

今俺たちは町から外れた人目に付かない小高い丘にいる、なんでこんな所に居るかというと、先日仲間になった? 自称剣聖ターニャ先生(以後 先生)による修行を強制的に受けているが、町中でこんなことしたら良い笑いものだ。

先生は自分である程度 浮遊して移動できるらしくフヨフヨ浮きながら指導している。


先生 

「こら!ダインなにをさぼってるんじゃ!」

 

「はい!すみません!」


先生  

「さぼった罰で小槍突き100回追加!」

 

「ひええ~~」

 

一体何百回突きを繰り返したのだろうか……普通にゲームやりたいな、

たまらず俺が地面に倒れると、

 

ズバ!

 

俺の顔の横に先生が突き刺さる!


先生

「誰が休めと言った…ああ?」 


「ひぃ!」


先生 

「誰が寝て良いといったかな?」

 

「すみません!」


熱血指導が続く中……

 

先生

「はあ~しかし、なんだね……あの子はセンスの欠片もないのに、なぜあそこまで頑張るのかの~~」

 

アクアさんが休憩せず素振りをしている。


「たぶんですね……」

 

俺は今までの経緯を説明すると、

 

「うう~~なんという悲しい物語じゃ!」

 

剣が泣いている!?

剣の束の部分から涙を垂らして……なんかすごいな 絵的に!

えらい感激してらっしゃるけど錆びちゃいますよ?

 

「先生それくらいにしないと……自分の涙で錆ますよ」


先生 

「うううっそうじゃの~こうなったら」

 

そういってアクアさんのとこに行き、

 

先生

「アクア、これからお前にターニャ流剣術を徹底的に教えるからな!」


アクア 

「え?!急になにか気合いに満ちてますがなにかあったのですか?」

 

先生

「ええい なんでもないわ!しっかり剣を振れ!」

 

アクア

「はい!」

 

それからさらに2時間くらい立っただろうか……

 

先生が俺のとこに来た

 

先生

「ダイン・・・我があれだけ本気で教えてるのだが・・・・・全然進歩せん」

 

「うむ~なんというか…」

 

先生

「アクアには剣は向いてないと思うのだが・・・」

 

「たぶん、装備が合ってないと思うのですが……でもアクアさんあの剣以外は武器持ちたくないみたいですし……とりあえず休憩しますか」

 

先生

「違う!あいつには剣の才能が無い!(涙)」


「錆びますよ」


俺は先生の涙を拭きつつそれ「何故?泣いてるのです?」という表情で見てるアクアさんと一緒に町の中心にある広場に面したカフェテラスのようなとりあえず村に戻り飯を食べることにした。

 

「おやっさん!サービスメニュー2つね」

   

俺たちは酒場兼食堂のお店に入った。


アクア 

「さすがに疲れました~でも!なんか強くなった気がします」

 

「ははは……そうだね」

 

先生

「…」

   

先生は無言だ……

 

俺たちが食べ始めると、


先生 

「ダイン!我の食事は!」


「え!先生も食べるの?」

 

先生

「あたりまえじゃ!」

 

「すみません 気づかずにサービスランチでいいです?」

 

先生

「馬鹿もんが!我がそんなもん食べれるか!鉱石や宝石じゃ!」

 

「えええ!そうなんですか 今手持ちが無くて……」


先生  

「この馬鹿もんが!飯も食わなくては力が戻らんし成長もできん!」

 

「成長?」

 

先生

「そうじゃ、一部の装備品は自ら成長をする、それは経験値であったり吸収によるものであったり、いろいろじゃ!」

 

「そうなんですね、そしたら適当な鉱石を」

 

先生

「いや!我くらいになると中途半端な鉱石ではダメだぞ」

 

「え?そうなんですか……今そんな手持ちは無くて、すみません」


とんだ金食い虫が…  


先生

「わかればいい!そういえば儂の見立てで行くとお主の手槍は経験で成長できるタイプの武器じゃぞ」

 

「え そうなんですか」

 

すぐ砕けるこの手槍をどうしたら成長できるのだろうか……

 

先生

「まあ、そこは分からんが儂は成長するとすごいからの!良い物を我には沢山用意してくれ、早く元の姿にもどりたいからな」

 

「善処します・・・」

 

そんな話をしていると戦闘の時に聴くBGMが流れ始め、

広場の中心にある祭壇に子供と女性が現れ子供が剣を持ちながらダンス?というか剣舞みたいなものを舞っている。

 

「あれはなんだろう?」

 

アクア

「あれは荒ぶる勇者ですね」

 

アクアさんが答えてくれた。


「荒ぶる勇者?」


アクア

「勇敢な戦士の物語をダンスで表したもので、小さな子供の誕生日に子供に舞って見せるとその子が勇敢育つという縁起の良いというものです、私もあのダンスは大好きです」


確かに殺陣っぽいものも組み込まれていてカッコいい感じだ。

 

「へ~確かにかっこいいですね、まるで戦っているみたいで」

 

アクア

「そうなんですよ!あれは仮想の敵を想像して踊るんです」

 

バタン!

 

子供が転びそうになりそれを庇った母親がが転んでしまい蹲っている、俺達は急いで駆け寄り、

 

「大丈夫ですか?」

 

女性NPC

「ええ、ちょっと転んで足を捻って」

 

女性は立とうとするがどうやら捻り方が悪かったらしく立てない。


「無理をしない方が」

 

女性NPC

「いえ、これは大事な踊りですからなんとしても」

 

それから何度か女性は踊ろうとするが、やはり足が痛くてうまく踊れない、

その様子に他のプレイヤー達も気になって集まってきた。

 

アクア

「あの、よろしければ私その踊りを知っていますので代わりに私が踊りましょうか?」

   

逃亡者のマントを外しアクアさんが女性NPCに微笑む、


アクア 

「主、私がこの人の代わりに踊りたいのですが宜しいですか?」

 

「問題ないと思いますよ」


女性NPC

「よろしいのですか?」

 

アクア

「ええ 踊りは得意ですから」

 

そういうとアクアさんはにっこり笑い踊りを始める、

得意というだけあって見ている人達を引きつける綺麗な踊りで徐々に周りの人たちも魅了していった……


 

プレイヤー達

「おおお!あの踊ってる人見たことあるぞ、たしかスクショが出回ってる噂の姫騎士だ、すごい」

「踊りうま!」

「スクショとれ!」

「おいフレに連絡を」

などと周りから歓声が上がり始めた。


踊りに組み込まれてる殺陣も剣が流れるように動きが一つ一つリアルで、

まるでほんとに剣が敵を切り裂くようなモーションで素早く、的確に仮想の敵を捕らえてる、先生はさっき剣の才能が無いって言ってたけど違うような気もするが……


そんな風に考えているうちにダンスは終わった。

 

女性NPC

「ありがとうございました、これでこの子も強い子になるとおもいます」

   

子供の母親がお礼を言い感動的な場面ではあるのだが、

しかしそれ以上に周りが……・


プレイヤー達 

「さすが!姫騎士」

「怪我負った女性の代わりに舞ってあげるなんて、姫様やっさしー!」

「姫!私を部下に~~!」

 

いつのまにか集まったプレイヤーですごいことに!

 

「やばいな アクアさん逃げますよ」

 

アクア

「え!あ!はい~~~~!」

 

俺たちはダッシュで外へ逃げ出した。

 

プレイヤー達

「待って~~姫様」

「姫騎士さま是非お話を~~~」

 

プレイヤー達が追ってきたが路地に入ったとこで、逃亡者のマントを着て追手を撒くこと成功した。

 

「ぜはぜは、アクアさん不用意にマント外さないでね」

 

アクア

「はあ はあ そうですね すみません」

 

その後ネット上にアクアさんの神対応とダンスの映像がUPされてまた祭りとなったのは後日談だ……

 

それから俺たちは町にいると危なそうなので再び町に戻り修行を再開することにした。

 

「先生 修行の前に試したいことがあるんですがいいですか?」

 

先生

「なんじゃ?」

 

俺はアクアさんに先生(剣)を持たせて ばるるん を探した。

 

「あ 居た」

   

いつも通りポヨンポヨンしている。

 

アクア

「アクアさんあのばるるんを先ほどのダンスの仮想の敵だとおもって、踊ってみて」


アクア  

「え?でもあれはタダのダンスであって・・・」

 

「いいから、いいから」

 

そういうとアクアさんは構え踊りを始める

 

ガッシュ

スカ

スカ

バシ!

 

ミスはするものの稀にではあるが攻撃がヒットしていく、それも今までとは比べものにならないくらいダメージが……そして見事に撃破!

 

「おお お見事!やっぱりうまくいったね」

 

アクア

「主!これは一体?!」

 

「いや、先ほどの踊りをみてもしかしたらと思ったんだけど、やっぱりあの戦闘にも活かせたみたいだね」

 

アクア

「こんな風に戦えるとは」

 

「昔読んだ本にソードダンサーって職業があって、もしかしてとおもって」


他のゲームというと混乱しそうなのであえて昔の本ということにした。


アクア

「ソードダンサーなんかかっこいいですね」

 

アクアさんの目がキラキラしている、

しかし……その手からダークなオーラを放っている存在に気付いたのはそれからしばらく経ってからだった。

 

先生

「ふん!どうせ我の修行なんて・・・剣聖なんて・・・イジイジ」

 

 先生が拗ねた・・・・・

 

 その後 アクアさんのステータスを確認したところ

 ソードダンサーのスキルが追加されていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る