第4話 昔話よりも今の話

トキが話したのはこの世界の事についてだった。


この世界は5大陸に分かれている。


火、水、風、土を司る4大陸には多種族の人々が生活して現在は平和。

残る1つの大陸は光と闇の渦巻く創生の地として人が住めない不毛な大地とされていた。


過去、創生の地を拠点に闇の眷属が跋扈し世界を闇に包もうとしたが、光の眷属達が各大陸の侵略問題を防ぎ戦いの末、闇の眷属の最高位魔神を打ち破り平和を勝ち取ったらしい。


光の眷属は、転生者の事。


慈愛の女神に呼び出された者たちで光の加護を受けている。

慈愛の女神は平和になった時代であっても、何故か転生者をこちらに送り続けている。


最近では光の眷属が目的喪失してしまい、ならず者になることもあるようだ。

特に倒すべき巨大な敵が居ない今は、導きの神官達は転生者がならず者にならないように最低限の教育をして、この世界で生活を送る事が出来るようにしているらしい。


転生者はまず主職業を決めない限り、導きの場所から出る事が出来ない。


過去、導きの場所は導きの神官がいる近い場所で、該当する神官が外出していた場合は野外に転送されることもあった。

今は、各4大陸の大教会内部に導きの間を準備、転生者はそこでしばらく待機の形になっているらしい。


トキは転生者として異例、特例の大神官になったそうだ。

特定の条件を持った転生者を迎える職に就いたらしいが、その詳細は割愛された。


職業を決める場合、転生者が元々持っている特性を確認し、それに合う職業にすると比較的能力が伸びやすく、特性と逆の物を選ぶと能力が伸びにくいとのこと。

ただし、すべての主職業を極めるならば能力の伸びは特に気にすることはない。


主職業を決めた後に、装備品等が支給される。


普通の魔物は定期的に湧いてくるため、戦う事もある。

魔物と戦う事に特化した職業が主職業らしい。

魔物の一部が高級素材の場合もあるので、腕に覚えがある人は魔物を狩って暮らしていけるそうだ。


主職業は、ファイター、クレリック、メイジ、スカウト。

戦士、僧侶、魔法使い、盗賊の解釈で良いと言われた。


これらの職業は、途中で転職も可能、最大までレベルを上げる事が可能らしく、最大レベルに達すると上位職を目指すことが出来る。

上位職転職後はこの主職業には簡単には戻る事はできない、


私はトキにファイターかクレリックをおすすめされた。

生き残りやすいからだそうだ。

……生き残るとか不遜な言葉だ。


この世界で死んだ場合、転生者は光の加護の影響で導きの大神官の元に自動的に蘇生される仕組みらしいが、蘇生場所は後から変更可能。

しかし、絶対死なない方が良いと言われた。


死ぬと経験値が失われて、最悪レベルが下がり能力も下がる。


強敵がひしめくエリアで死んだ場合、蘇生場所をその付近に設定していると絶望しかないと悲痛な顔で言われた。

私には魔物すら想像つかないので、ふーん…と相槌を打つしかできない。

最上級魔人を打ち破った後でも、強敵魔物は創生の地では消失していない。


この世界の住民は主職業に就くため様々な試練を潜り抜けなくてはいけないらしく、転生者以外は主職業に容易に就くことができないらしい。

元々の住民は副職業と言われる仕事で生計を立てている者が多い。


副職業については、特定の職人の弟子になり修行を重ねて開業可能。

別の職人に転職したい場合は、転職のために多額のお金が必要らしい。

……なかなかのブラックだ。


副職業の職人になりたければ、各大陸の街に居る職人に教えを乞う必要がある。

ここは今必要ないからと、割愛されたが、トキは服職人を選んだと言った。

パンツ一枚で野外に放りだされたトラウマから服って大事と熱く力説された……。


たくさん話してトキはすっきりしたようだ、私はちょっと疲れたが。


トキが目の前の燭台の炎を指さす。

「アヤちゃん、この火に手をかざして」

言われた通りに手をかざすと、色が変わった。


外側が赤で囲まれ白が多めに見える、水色黄色緑色が交互にストライプを描いて、ろうそくの芯の部分のみが黒い。

「これは特性を見る為の火……やっぱりか」

燭台がトキの手の平に小さくなる。トキはそれをひょいっと鞄の中に入れた。

「やっぱりって?」

「……ファイターかクレリックかなって、主職業選ぶなら」

言っている意味がいまいちわからない私は、火がついたままでも大丈夫なのだろうか?その鞄と思っていた。


昨日の彼女達は、主職業に就いた際、ある程度のレベルに達するまで、教えを乞う先生達らしい。


この世界に人間種族は転生者以外に存在しない。

鬼人族、魚人族、妖精族。妖精族は土妖精族や古代妖精族と細分化すると多様に渡るが、基本が妖精らしい。


鬼人族は元々火妖精族、魚人族は元々水妖精族だったと学説があるらしいが、元から違う種族だったと反発する一派もあるらしいので、種族問題には出来る限り首を突っ込まない方がいいと釘をさされた。


私はトキの後ろを追って、彼女たちの待つホールへと歩いて行った。

今からその先生たちと仕切り直しご対面となるそうだ。

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