第34話poison


また、先ほど居た森に帰って来た。

戦闘システムにもちょっとだけ、慣れて来たし・・・また新しい魔法を使っていくとしよう。


「リチウムか(Li)・・・どんな魔法効果だろう?・・残りMPが9で、消費MPが4だから、2発しか打てないな!ま、体力は城(カスデ・ムショクナ・モンデ)に帰って回復すればいいだけだし!」


意気込んでいた僕の、視界の端に蠢く影が映った。

慌ててその方向を身構えると、縄の様なモンスターが僕目掛け這いずってくる。

僕がモンスターの攻撃を交わすと、伸長な躰をくねらせて威嚇してくる。


「・・・気持ち悪っ!・・今度は蛇か!」


僕の目の前に現れた、巨大な蛇のモンスター。

爬虫類独特の色合いが、正直見ていて気持ち悪い!

口から舌をだして、僕の事を今にも丸呑みにしそうな仕草をしている。


「僕は美味しくないぞ!」


「そうなんですか?坊ちゃん?試しに1回・・食べてもらえば・・・ベェ!ベェ!ベェ!」


バフォちゃんはいつもの様に、僕に毒を吐いてくる。

しかも、とっても嬉しそうに言ってるし・・・。

この執事、僕の事を何だとおもってるんだろうな!今度詳しく聞きたいよ!


「剣じゃ届かなそうだな・・・サブ・ウエポンで戦うか!」


手に持っていた剣の柄を押して、僕はサブ・ウエポンに持ち替えた。


武器と盾を手に僕は、モンスターの蛇を見つめた。

ん~デカいよね?正直テレビとかで、出てくるアナコンダぐらいのサイズなんですけど?

これって・・・雑魚キャラなんですよね?難易度高くない?ジョブ・ガチャって!

手にした槍を持って、僕は蛇に突撃した。


「おりゃああ!!」


僕が放った槍攻撃は、蛇の体に直撃した。

しかし次の瞬間、分厚い蛇の皮が槍をはじき返した。

「・・・あ!」

まるで車のタイヤを槍で突き刺した時の感触だ!・・・実際に突き刺した事ないけど、そんな感じ・・・。


攻撃を弾かれて体勢を崩す僕に、蛇のモンスターが巨大な牙を向け這いずっていくる。

もの凄い勢いで蛇の頭部が、こちら向かってくる。

呼吸を合わせて、左手の盾で蛇が放つ牙攻撃を防ぐ。

僕の体に衝撃と共に、盾に牙がぶつかる高い音が聞こえてくる。


「く・・・くそっ!凄い衝撃だっ!」


蛇の頭をいなした方向に、僕は向き直った。

盾のすき間から、蛇を確認するも・・そこには蛇の体が横たわってるだけだった。


「・・・え・・・あれ?い、いない?ま、まさか!?」


僕の後ろから垂直に、黒い影が伸びていく。

後ろの様子は確認できないまま、僕は振り向きざまに蛇に向け槍攻撃を放った。


「うりゃあ!」


しかし次の瞬間、僕の右腕に激痛が走った。

「ぐわぁ!」

振り返るとそこには、僕の右腕に鋭い牙を突き立てている蛇の姿が・・。

僕は巨大な蛇の牙から逃れるように、左腕の盾で蛇の顔めがけ攻撃を放った。


「シャアァ!!!」


固い盾が蛇の目に直撃、

右腕にかぶりついてた蛇の顎の力が緩んだ。


「い、今だっ!」


僕は右腕を抑えながら、蛇からすこし距離を取った。


「ふ、ふぅ!危ない危ない!・・・・・あ、あれ?景色が歪んで・・・・」


目の前の景色が、ぐらぐらと歪んでいく。

数秒もすると歩く事も困難なほどになって来た。

メニュー画面を確認すると「毒 poison」と表示されている。

ふらつきながら、考えあぐねていると体内から強烈な吐き気が襲ってきた。


「ぐ、ぐえぇぇ!」


「坊ちゃん!毒による継続ダメージですよ!ベェ!ベェ!ベェ!早く回復しないと死んじゃいますよ~♪」


本当・・・こんな時でもいつもの調子なんだな、こいつは。

一定の時間ごとに毒による、吐き気が襲ってくる。

そしてそのたびに僕のHPは減って行く。

どうやって回復すればいいんだろう?アイテムとかも買い込んでないからな!


僕の盾攻撃で怯んでいた蛇も、体勢を立て直しこちらを探している。

くそっ!とりあえず、新しい魔法で・・・。

普通のRPGなら、そろそろキ●リーっぽい、解毒魔法を使える頃だろうし・・。

と、とりあえず僕は新しく覚えていた魔法を唱えてみた。


「リチウム(Li)!」


ポーズを構え自分に向け魔法を唱えると、右手から白い霧状の物体が放出された。

その白い靄のような魔法は僕の体を包み込んだ。

そして僕の体の中から、リチウム(Li)に押された紫色のドロドロとしたものが、体外へと流れ落ちた。


「・・・あ・・・もしかして・・・・!!」


僕はすかさずメニュー画面のステイタス欄を確認した。

先ほど「毒 poison」の表示が、画面から消えていた。

歪んでいた目の前の景色も、いつもどうりによく見える。


「ら、ラッキー!助かったー!」


「坊ちゃん!持ってますね~♪回復してよかったですね♪ベェ!ベェ!ベェ!」


その時僕の事を発見した、蛇がまたこちらに牙を向けて飛び込んでくる。

地面の上を体をくねらせて向かってくる姿は、見ていて気色の悪いモノだった。


「地面を這いずって・・・・そうだ!さっきのカラスの時に・・・」


先ほどはカラスによけられ不発に終わったが・・。

地面を移動するモンスターには有効なんじゃ・・・。

僕は向かい来る蛇の少し先に向けて、右手を構え魔法を唱えた。


「ヘリウム(He)!」


その瞬間、僕の右手が光輝き、水色の液体が放出される。

地面にぶつかったヘリウム(He)の魔法は、その場所から凍り始めた。

這いずって移動していた蛇も、魔法に巻きこまれて動けなくなり始めた。

徐々に凍り付きながら、蛇は僕に向けて口から紫色の液を飛ばした。


「うわ!」


先ほどくらった、毒のイメージが残る僕には怖い攻撃だ!

すぐさま、盾を紫色の液が飛んでくる方に向けガードする。

盾から逃れて僕の後ろにこぼれた液体が、地面の草を溶かしている。

紫の毒の液体の威力をまざまざと、僕に見せつけていた。


「坊ちゃん!この蛇、私と一緒で毒を吐いてますね♪ベェ!ベェ!ベェ!」


「はいはい!そうですね!っと!」


僕は凍り付いていく蛇をめがけて走り込んだ。

その間にも蛇の放つ毒攻撃が飛んでくる。

毒をかわしながら、僕は蛇の懐に潜り込んだ。

その勢いのまま、槍で凍り付いた蛇の体を突き刺す。


「おりゃ!せりゃ!どりゃあ!」


ゴムの様な蛇の体の弾力は、凍りついた事で弱まっていた。

僕の放つ槍攻撃がすこしづつだが、蛇にダメージを与えていっている。

しかし、間合いが近いためか、まだ僕が槍を使いきれていないのか・・・。

攻撃の速度がいまいち伸びない。そこで僕はサブの槍から、メイン武器の剣にチェンジさせた。


「・・・間合いが縮まった今なら・・・剣の方が!行くぞっ!そりゃ!どりゃ!」


正直魔法も打てず、感情ゲージも溜まっていない今は通常攻撃しかできない!

ヘリウム(He)の魔法で、蛇が凍り付いている間に決着を付けないと!

僕は必死に蛇の体を、剣で切りつけ続けた。


「シャアァ!シャァ!!」


僕の剣が体を切り裂くたびに、蛇はうめき声をあげている。

でも・・・ここで手を休めると今度は僕がやられる事になる!

心に沸いた一瞬のためらいを殺して、僕は剣を振り続けた。



「・・・・・・・・ギ、ギシャア!!!!」


力尽きた蛇は、断末魔を上げてその場に倒れ込んだ。

巨大な蛇はその場で霧散して、いつもより大き目の感情玉を放出した。

そしてそのまま、僕の右手の剣の宝玉に吸収された。


「・・・・・・はぁ、はぁ、はぁ!・・・毒はやばかったな!HPも半分以上減ってるし・・・」


剣を振り続けて、正直かなりしんどかった。

でも何とか勝つことが出来て良かった・・。


「どうします?坊ちゃん?冒険を続けますか?ベェ?」


「帰る!そう、僕は慎重な男!」


僕は回復の為に城(カスデ・ムショクナ・モンデ)に帰る事にした。

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