第32話好奇心


バサバサと羽音が僕の耳に入ってくる。

正面からこちらを目掛け、黒い物体が飛んで来た。

身体にぶつかる寸前のタイミングで、僕は飛来して来るモンスターを交わした。

ゴミの日や動物の死骸によく群がってるな。家の屋根とか、電柱とか・・。


「・・・次はカラスか!」



空中で旋回して、こちらへ飛び込んでくる1羽のカラス。

黒いくちばしを光らせて、僕の体に突き刺そうとしている。

左手の盾に衝撃と、高い金属音が辺りに響いた。僕は攻撃を防ぎながら、カラスと目が合った。

不気味な黒い瞳は、どこか死を連想させる。


「おりゃ!」


右手の剣で攻撃を放つが、あっけなくかわされる。

知能の高いカラスは、どこか僕を馬鹿にしたように、空を旋回している。


「くっそ!鳥にまで馬鹿にされるとか・・・。そうだ!ねぇ!バフォちゃん、サブ武器とチェンジする時はどうするの?」


「あ、はい!坊ちゃん!各武器の底にスイッチがありますので、それで瞬時にメイン→サブに切り替えできますよ!ベェ!ベェ!ベェ!」


バフォちゃんの話を聞いて、剣の柄部分をのぞき込んだ。


「あ!ホントだ!スイッチが付いてる・・・ポチっとな!」


僕は剣の柄にある、赤いスイッチを押してみた。

すると、手に持っていた剣は瞬時に霧散して、新たに槍が生成された。

右手にサブウエポンの槍が現れ、それを掴んだ。

さっきまでの剣とは違い、ちょっとだけ重く感じる。長さのせいだろうな。


「よしっ!今度は届くだろっ!行くぞ!カラス!」



上空を飛ぶカラス目掛けて槍で攻撃を放つ。


「おりゃ!とりゃ!・・・・・おんどりゃ!・・・・・はぁ、はぁ、はぁ!手が痛い・・」


僕の放つ攻撃は、カラスに命中する事はなかった。

ふと我に返って、この状況を打開する手を考えることにした。

その間もカラスが僕の体を目掛け、くちばしを突き刺そうとしてくる。


「・・・くそ!忙しいな!」


くちばしの攻撃を盾で防ぎながら、メニュー画面を確認する。


「・・・感情ゲージが1つと、魔法が2発分か・・・とりあえず、さっき覚えた魔法を使ってみるか!」


上空を飛び回るカラスに向けて、魔法を放った。


「ヘリウム(He)!」


その瞬間、僕の右手が光輝き、水色の液体がカラス目掛け飛んでいく。

しかしカラスに当たる寸前の所でかわされてしまった。


「え?まじ?よけるの?・・・・」


ヘリウム(He)の魔法は地面に落下して、その場所を凍らせた。


「ヘリウム(He)も、氷魔法かな?」


僕は好奇心から、ヘリウム(He)が落下した場所に近づいてみた。

ヘリウム(He)の魔法が落ちた地面は、冷気を放ち凍り付いている。

例えるなら・・テレビとかでたまに見る、冷凍庫の中みたいな感じかな?

そばにいるだけでも、寒いな!・・・ちょっと触ってみるか!・・・ちょっとだけ・・僕は足で凍っている場所を、つんつんしてみた!



「・・・・あ!え!?嘘?足が・・・凍った!え?動けない!?どうして?」


「・・・どうしてって・・・!坊ちゃん、バカなんですか!?だいたい想像つくでしょう?ベェ!ベェ!ベェ!だめだこりゃ!ばかだこりゃ!」


ヘリウム(He)の魔法を自ら受けて、動けない僕にカラスの容赦ない攻撃が襲い掛かる。

盾でガードできない、背中を鋭いくちばしが突き立てていく。


「痛っ!・・・この!・・・くそ・・・カラスめ!・・・痛っ!」


「いいぞカラス!坊ちゃん!良かったですね、脂肪を食べてもらってるんでしょ?新しいダイエット法ですね!ベェ!ベェ!ベェ!」


「五月蠅ーい!クソ羊!テメェ、ホントにリストラするぞ!・・・・ったく!」


しばらくカラスに啄まれた後、ようやく足元の氷が砕け散った。

凍りよる拘束から解かれて、僕は自由になった。


「・・・自分の魔法で死ぬ所だった!好奇心って怖いな!」


「・・・ベェ?・・馬鹿なだけでしょ?」


僕はループエンドに居る、小さくなったバフォちゃんにデコピンを放った。


「・・・・ふぅ・・・どうしたもんかな?」


メニューを画面を確認してみる。

HPもカラスの攻撃で減少しているし、MPがのこり・・・3と、感情ゲージが1ゲージか。

カラスの攻撃を盾で防ぎながら考えていると、ふと地面のオブジェクトが目に入った。


「・・・!オブジェクトはどうなるんだろう?・・・試したいな!」


湧き上がる好奇心には勝てず、僕はオブジェクトの岩に向かって魔法を唱えた。


「ヘリウム(He)!」


魔法を吸収して、岩のオブジェクトは緑色に光り出した。

そして、次の瞬間上空に向かい急上昇を始めた。

そのまま上空を飛んでいるカラスに直撃した!


「ガァ!!」


「ら、ラッキー!」


カラスは岩の衝撃で地面に叩きつけられた。

地面に落ちた後、目を回してその場をフラフラと歩き回っている。


「坊ちゃん!持ってますね!ベェ!ラッキーヒットですよ!」


「うん!ホント、ラッキーだ!」


偶然の出来事に喜んでいる僕たち。

しかし、しばらくするとカラスが正気に戻り始めた。


「やばっ!急げ!」


僕は急いで、青の感情ゲージをプッシュクリックした。

次の瞬間、体の周りに青いオーラが放出される。

そのまま、上空へ飛び立とうとするカラス目掛け僕はダッシュした。


「くらえ!おりゃああぁ!!」


空中での素早さも、地上では発揮できず、僕の放つ槍にカラスは突き刺された。


「ガァ!ガァ!ガァ!」


叫び声をあげ、カラスの体はその場で霧散した。

いつものように、感情玉が放出され、手に持っていた槍の宝玉に吸収された。


「・・ふぅ!手ごわかったな!・・・次は出会った時はどうやって倒そうかな!」


「坊ちゃん!どうします?まだ、戦闘を続けますか?ベェ?ベェ?ベェ?」


バフォちゃんの問いにメニュー画面を確認する。

MP全部使ったからな・・・一度帰ろうかな。


「一回城に帰って休むことにしようか!」


「はい!わかりました。坊ちゃん!ベェ!」


僕たちは城で小休止を取るために、カルマの街に帰る事にした。




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