《愛》→言葉+物語=《歌》

かの文豪は《I love you》の和訳を「愛してる」ではなく「月が綺麗ですね」と読ませたと言います。このようにひとつの言葉に様々な意味を見いだし、多様な表情を持たせて、読者の心に響かせるのが物書きの本領であろうかと、私は考えます。
こちらの短編はまさしく物書きの本領を発揮した《言葉》の物語でございます。《言葉》は人類にだけ授けられた、素晴らしいもの。互いの気持ちを通わせる為の架け橋となり、愛を確かめる誓いともなり、時にすれ違うこともあるけれど、《言葉》があればまた繋がりあうこともできるはず。《言葉》は綴られることで永遠に残り、《歌》となって世界の果てまで羽搏いていく。

メル・アイヴィー

彼女の《歌》は小さな部屋から羽搏き、時さえ越えて、彼女を愛し彼女もまたその魂のかぎりに愛していた「彼」のもとに飛んでいくでしょう。
そうして何度でも、何度でも。
彼女と彼は、愛を《言葉》にするのです。

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