愛とかいう我儘な凶器

お互いの愛の重さが、天秤を水平にすることは無い。だから、双方が双方に対し歩み寄り、事情を擦り合わせる必要がある。所謂、妥協をする必要が。
恋とは妥協の連続なんだ。それをみんな分かってくる。けれど、どうしても、依存なしには生きていられない人がいる。そして、愛は我儘にさまよう感情......一度強く酔いしれてしまったら、もう『他』では酔えなくなってくる。人は弱いから、時に悪酔いがしたくなって、『他』を貪ってしまう。貪られる側の気持ちなんて、関係ない。虚しさに身を委ねて、自分の孤独な心をまぎらわせてしまう。それを、いつしか恋愛だとか交際とかって呼んで、もっと霧中に消えていく。そういうのは、どうしようもない。けど、貪られた側はどう堕ちていくのかまで、想像したことがあるだろうか。覚えのある、共依存の生温い優しい感触と危険性に、読者はきっと背筋が凍る思いになるだろうと思う。


若者の恋情の軽重について、鋭く、残酷なまでに描ききった秀作。心を強く揺さぶられた。