紅と蒼に紛れし真実の言葉

皆麻 兎

プロローグ

雨の中で、泣いている少女。

蒼き瞳より流れる大粒の涙は静かに頬を伝い、地面へと落ちる。

悲しみを忘れさせるかのように降り続く雨だが、彼女の哀しみが癒える事はない。


“夢”の続きは、情景を一瞬で違う状態ものへと変えていく。

周囲には星のように小さい光が多く舞い、その中心には“彼”がいた。

「●●…!」

メルは、自分の視線の先にいる“彼”の名前を呼ぶ。

しかし、当の本人は振り返ってくれない。1メートルもない至近距離にいたはずの“彼”が、時の経過と共に、背を向けて遠く離れていく。

「やだ…。行かないで…!」

メルは、自分の声が次第に出なくなる感触を噛みしめながら、“彼”へと腕を伸ばす。



「独りにしないで…!!」

そう口にしたメルは、自分が横たわった状態で叫んでいる事に気が付く。

瞳を開いた彼女の視界に入ってきた最初の光景は、ブラウン調をしたチャペルの天井だった。

「……私……」

目覚めたばかりの彼女は、自分が夢を見ていたのは気が付いていたが、その内容が全く思い出せない。

ブラウン調のチャペル内にある台の上で眠っていたメルは、ゆっくりと起き上る。彼女の視線に広がるのは、席の至る所で光る蝋燭の炎と、大理石で造られているバージンロードだった。


「眠り姫のお目覚め…って所かな?」

「…っ…!!?」

すると、闇の中より見知らぬ声が響いてくる。


この後より、私――――メル・アイヴィーの奇妙な生活が始まるのであった。


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