第3話「洞窟の中に居た人物(真っ暗な洞窟でした)」

 外用の靴に履き替えた俺は、懐中電灯を持ちながら、押し入れの中に出現した洞窟の中に入っていく。

 周りは闇のように真っ暗だった。懐中電灯の光りを頼りに先に進む。好奇心から洞窟の中に入っていったものの、足を踏み入れるうちに恐怖心を感じる。視野が狭いからなのか、ただ暗いからなのだろうか。小説のネタ探しとして入ったものの、何もなければいいのだけど。

 進んでいくうちに次第に距離感がつかめなくなる。俺はゴクリと喉を鳴らしながら、恐る恐る進んでいく。

 風が奥底から感じられる。もうすぐゴールなのだろうか。なぜ押し入れの中にこんな洞窟があるのか疑問に思いながらも歩き進める。

 これがもし瑕疵かしならばマンションの担当者にクレームを入れるしかない。ただ、ここが三階、信じてくれるかどうかわからないけれど、現物をみたら信じてくれるだろう。


 歩いていくうちに、湯気が漂いながら、湿気っぽい雰囲気を感じさせる。洞窟の天井から水滴がぽとりと俺の頭に落ちる。

 まさかマンションに水でも溜まっているのだろうか。いや、このマンションはまだ十年ぐらいしか立ってないはず。はずなのだが、これが原因で水漏れでもしていたのなら、金銭を請求してやろう。

 俺はその湯気が出ている、その場所に着いた。湿気が凄い。それに熱気まで感じてくる。

 奥底には光が輝いていて、誰かが居る気配がする。チラリと岩から見ると、天然の温泉が湧いていた。その湯舟からは湯気が周囲を囲い、奥底が真っ白な湯気の部屋になっていた。


 くそ、こんな場所になんで温泉があるんだよ。部屋が水漏れになったら大変じゃないか。

 俺は目を細めながら、人影らしき人物を発見する。

「こいつが犯人か。文句の一つでも言ってやる。このままじゃマンションにカビが生えて、お金を請求されかねない」


 俺は「よし」と言葉を吐いて、靴と靴下を脱いで、温泉に入っていった。

 そして、温泉に浸かっている人影らしき人物の背中に近づきながら、

「おいこら!人んちになんで温泉なんて作ってやがるんだ。部屋にカビが生えるだろうが」

 俺の怒鳴り声にピクリと反応して、その人影は立ち上がり、頭にのせたタオルを湯舟に落とした。その姿は頭に猫耳をピンとさせて、目を見開いていた。


 次第に温泉から出ている湯気から、目のピントが合い、立ち尽くしている人物が見えてくる。

 その人物は、中学生二年生のような幼い体格で、全裸で俺の目の前にいた。オレンジ、黒、白色に輝く背たけまである髪の毛、身体はすらっとスレンダーな女の子。頭の上には猫を表す猫耳がある人間にそっくりな猫娘だった。


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