第2部 「四色の聖者編」

8話




パリ・エッフェル塔は夜になると全体がライトアップされる。そのてっぺんには、莫大な光量のベールに包まれながら一人の赤髪の男がポツリと、佇んでいた。

一歩間違えれば即死は確定の位置で見事なバランスをキープしている。年齢は十七ぐらいで、服装はほぼ髪の色と同じ民族衣装のような紅の装束を纏っている。


彼の名は、『ルビア』。『業火』を司る聖者である。彼が所属しているのは『四刹団』(しせつだん)という、四人の聖者で構成されている組織である。彼の他にも、『水』を司る『サファイ』、『緑』を司る『エメラルダス』、『金』を司る『トパズーリ』が存在する。 彼らの目的は世界の理を乱すと言われる「とある能力」を早期発見し、処理することである。


彼の片手に乗っている手のひらサイズの水晶玉にはとある国に住む例の高校生の姿が映し出さされていた。 それを見て不吉な笑みを浮かべる。


「なるほど。【今年】は彼が選ばれたと言うことか・・」







桐生は白石を一泊止めることになり、現在桐生家に向かって進行中だ。


その途中、いつもと見慣れない景色がチラッと映った。 それはここ最近新しくできたらしい公園である。 入口にある看板には「尾根所田公園」と書かれている。


「たまげたなあ。つい昨日まで更地だったはずだったんだけどなあ」


声に出したのは白石だった。


「あ、あの、なんか口調が変ですよ?」


「え?そ、そう?」


「それはさておきこの公園、たった一晩で完成するなんて・・。 なんか嫌な予感がするぞ。」


「入ってみる?」


桐生は少しでも気になったものは調べたくなる性分である。


「そうだな。ちょっくら行ってみっか。」


公園の中はいたって普通の構造だった。 入り口付近に鉄棒があり、北東には滑り台、北西にはブランコとシーソー。 まあここまでは特に変わったものはないんだが。


先程から白石はある一点を興味深そうに凝視していた。 やがてその一点を指差し、桐生の袖を引っ張った。


「ねえ、何あれ?」


白石が指差す方向を目で辿ってみると、そこには不気味な井戸があった。公園のど真ん中にニョキっと生えているような感じだ。中からはもわわーんと、気色の悪いオーラが青い煙という形で可視化されていた。


二人は恐る恐る井戸の元まで近づいてみる。


「なあ、どうする?俺のワクワク冒険スピリットが暴れだしそうになってんだが」


「何わけのわかんないこと言ってんのよ。つーか、無理!こんなキモいところなんて絶対入らないもんね!

なんかちょっと牛乳ぞうきんの臭いがするし」


桐生が、やっぱり危険だなやめとくかと言おうとしたその瞬間だった。

白石の鼻にスギ花粉が飛来したのだ。そして・・


「ふあっふあっ」


「おいまじかよ・・」


「ふああ、はっはっ」


(待て待て!止まれ、止まれ止まれ!やめてくれええええええ!!)


桐生は、あ。詰んだな。と思った。この時ほとんど諦めてた。何もかも。


「ファッックショーーーーーーイ!!!」


つるんっ!!!


なんだかんだ勢いで二人は井戸の中にドロップダウンしてしまった。


「ひゅーー。あはははは!きもっちいい!」


「言ってる場合かー!お前が不意にくしゃみなんかするから落ちちまったじゃねえか!」


(落下中)


「あはは、ごめんごめん。」


(落下中)


「それにしても深いわねー」


(落下中)


「肝が座ってんなー。」


(落下中)


そしてようやく出口と思しき光が見えてきた。

二人は互いの顔を見つめ合い、手を繋ぎあったまま先に広がる未知の世界へと放り出される。


To be continued..

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る