コラム8 乳の起源

 乳物学者ブーウィンは、全ての乳源・全ての乳物が一個の乳子から進化したと発表し、ブレスト教会からの吸弾を受けた。


 だが、今ではこれらの学説が大胸正しいとして、世π中の教科書に載せられている。(のちにブレスト教会の中にも進化論を肯定する流れが生まれ、《インテリジェント・ブーブス論》が唱えられるようになった。)


 より生存に適した乳体が次世代に受け継がれるという《適乳生存の法則》は、それぞれの環境に適合した多様な乳房たちを出現させた。乳子から微乳物、微乳物から哺乳類へと適乳生存の暁に進化したというのが現在の常識だ。


 だが、その巨乳的支持を得たそれらの進化論が今、実はそれも間違いだったのではないかとの乳議ちちぎを醸している。


 その原因となったのは「最初の乳子はどのようにして生まれたのか?」という根源的疑問である。原乳げんち的生命体である微乳物や、さらに小さなパィルスへとスケールを小さくしていくと見えてくるのは《乳子》という不乳議な存在だ。


 乳子は、乳物という乗り物なしには生存・繁殖し得ない構造を持つ。乳子研乳者は約百年もの間、様々な仮説を提唱してきたが、そのどれにも決定唾けっていだを出せないままでいた。


 ところがπ歴二千年。この星へと落ちてきた隕石は、乳学界ににゅうウェーブを巻き起こすこととなる。のちに《セカンドミルク》と名付けられた隕石に、我々の体内で蠢いている無数の乳子と全く同じ遺伝π列を持った《凍結乳子》が含まれていたのだ。


 現在、各国が競うように《無乳探査機》を宇宙へと発射し、宇宙空間や他の惑星から《乳球外乳石》を集め回っている。どこかの惑星で暮らしている《超乳性オーバーティッツ》との遭遇を願いながら。


【参考文献】

『乳の起源』(チチアールゼ・ブーウィン、訳:乳谷乳漏、乳波書店)

『すべてが乳になる――乳形図から見た進化の乳史』(乳川浴、巨乳大学出版会)

『「セカンドミルク」の衝撃』(乳谷乳漏、新乳社)

『乳児期の終り』(アルサー・C・クラーイ、訳:乳山呑子、乳川書房)

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