離乳の儀〈後編〉

 こんもりと盛り上がった見目麗しい下乳が、乳衣の隙間から覗いている。

 バスティ王子は、無数の乳臣や乳衛兵らが取り囲む乳王の間で乳房を下げ、オリゴ乳王の美巨乳を見上げていた。


「わちが乳離れするのは……リゾ・チムじゃ」


 王子の胸は、もう震えてはいなかった。


「そうか……ではリゾ・チムよ、ここへ」

「ぱい」


「これより《離乳の儀》を執り行う。チムよ、オリゴ王子に乳を捧げよ」

「有り難き乳合わせ」


「えっ……?」


 チムは床に膝をつき、自分の前へと歩いてきたオリゴ王子の体を、すくい上げるようにして抱きかかえた。

 そして乳衣を捲って適乳を晒け出すと、オリゴ王子の口元へと運んだ。


「なっ、何を――」


 駆け出そうとする王子の両乳をフェリンの手が掴み、王子を後ろから抱き止めた。


 そして見せた。オリゴ王子が、チムの乳首に力強く吸い付く姿を。


「チムゥゥゥ!! 嫌じゃ嫌じゃ!! 離せ! 離さぬかぁ!!!」

「バスティ王子。胸苦しいでしょうが、この場は堪えていただきとうございまする」


「そんな……嫌じゃあ……あれはわちだけの……」


 今まで、他の誰にも直呑みを許さなかった乳房が、自分よりも幼き者の口によって吸われている。


 バスティ王子は、見れば見るほどにオリゴ王子への憎らしさに打ち震えた。両目からは上の乳が乳滝のように流れ落ち、床に乳の湖を作るほど。その乳辱感は量り知れず、乳房に青スジが浮き立つほどであった。


 そしてバスティ王子は、幼き日にプロティーンへ訪れた様々な使者たちのことを、次々と思い出した。見知らぬ乳房を訳も分からぬまま呑まされ、なぜかは分からぬが上の乳を垂らす者たち。あれは、こういうことだったのか。


 オリゴ王子は数回ほど喉を鳴らしただけで、あっけなくチムの乳首から口を離した。そしてチムの腕から降りると、バスティ王子に向けて、胸元をほころばせた。


「ぅ……ぁぅぅ……ヂムゥ……ヂィィムゥ……」


 そしてオリゴ王子は立ち上がったチムの手を握り、乳同に背を向けて乳王の間から出ていった。


 フェリンは、今にも駆けだしそうな王子を後ろから強く抱き寄せ、その乳房が潰れんばかりに押し付けた。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


 泣き止まぬ王子の背中を、フェリンの乳房が上下した。ゆっくりと、何度も何度も撫で続けた。

 乳王を始め一谷一谷が部屋から立ち去り、躊躇う三天乳が立ち去ったあとも、乳房でゆっくりと撫で下ろし続けた。



  ω ω ω



 π陽が乳雲を赤く染め始めた頃、乳民たちからの祝乳を浴びながら、バスティ王子たち一行は巨乳門から出ていった。


「これが乳地図ちちず、あと方位乳針ほういちしん、落とすんじゃねぇぞ?」


 ビフィから新たな乳地図を受け取ったフェリンは、それをたたんで胸元にしまった。


「まったく、無乳なことをするもんだぁ。ミナラルまで陸を歩いてゆけるもんでもなかろうに」

「それゆえ、この乳筏ちいかだで渡るのですね?」


 乳木で円形に組み上げた乳筏が、波打ち際に漂っていた。そこへ乳衛兵らの手で続々と乳産品――粉乳、薬乳糖、乳果の房、それから仕込みたての乳酒の巨樽まで――が積み込まれていく。


「ゼイン、これを」

 チムは左耳に付けていた乳飾りを外すと、ゼインの手に握らせた。


「これは、おぬちの手で渡せば良いと思うが?」

「王子に話しかけても、無視されるばかりゆえゆえ」


 チムの乳差した先に、手足を放り投げるようにして胸浜に座り込むバスティ王子がいた。虚ろな目で乳波を見つめながら、乳酒を浴びるようにして飲んでいる。


「まったく、今生の別れになるやもしれぬと言うのに」

「乳荷は積み終えました。いつでも出れまする」

「片乳無い。それでは暗くなる前に参りましょう」


 チムは四谷の乳房の前に歩み出た。


「フェリン、ゼイン、ルブミン、ロブリナ」

 チムは彼乳らの前に乳まづき、乳房で大きく二つの輪を描いた。


「バスティ王子をお任せいたしまする」


「乳意」

「共にプロティーンへと帰りましょう」

「チムも勃者でな」

「帰るときは乳果を忘れずにな?」


「ぱい」


 チムの乳頭が熱くなるのも露知らず、バスティ王子は彼乳らの横を乳鳥足で通り過ぎていった。


「ひっく……はよ、乳筏を出せぃ。こんな国、二度と目にしとぅないわ……ひっく」


 王子は乳筏の上にボインと腰を下ろした。


「チムとのお別れは――」

「もう良い!!」


 フェリンは乳を縦に振って、三天乳らと乳筏に乗った。


 オリゴ乳王、ラクトースの君、ビフィ、そしてオリゴ王子と手を繋ぐチムに加えて、たくさんの乳民らに見送られながら、乳衛兵の手によって乳筏を陸に繋いでいた乳縄が解かれた。


「ちみたちの御乳運を祈っている」

「有り難き乳合わせ」


 バスティ王子が座ったままなのを見かねて、チムが王子に歩み寄った。

「よくぞお決めくださいました、王子!」


「おぬちのことなど知らぬ……勝乳にせい!」


 王子がチムの乳首から目を反らしても、チムは王子の乳首から目を離さなかった。


「王子が我が子を育て、成乳の儀を迎えるときに参上いたします! そのときには、大きくなったそのお乳で、わちちに一口の乳汁を呑ませてくださいませ!!」


 そしてチムは、王子の両脇を手で抱えながら、真正面に立たせた。それでも王子は、乳衣を濡らしている乳首の方を見ようとはしなかった。


「嫌じゃ……チム。チムも一緒に来るんじゃあ――うっ!!」

 チムは両の乳房を手で挟み、騒ぎ立てようとした王子の口を両乳首で塞いだ。


「誰も見ておりませぬ。今一度お呑みくださいませ」


 王子の目の前で、チムの乳房はドクンドクンと脈打っていた。その大きさは、フェリンの乳房と変わらぬほどにまで張っていた。


 優しい甘みの乳汁が王子の口内へビュウビュウと注がれ、溢れ出たものは乳衣を伝い、砂浜に乳溜まりを作った。


 王子はゴキュンゴキュンと喉を鳴らし、その白滝を呑み下していった。顔面を乳汁まみれにしながら、チムの谷間に溜まった乳も吸い取った。


「これで最後ではございませぬ。必ずや、お国に戻って参りますゆえゆえ」


 チムの乳の出が弱くなってくると、王子はようやく乳首から口を離した。

 彼乳の胸の内を察し、その乳房から両手を引いた。


「必ずじゃ! 必ず帰ってくるのじゃぞ!!」


 五谷を乗せた乳筏は、乳波に揉まれながらπ陸を離れていった。


「王子ぃぃぃ!! お勃者でぇぇぇぇ!!」


「ぱいぱぁぁい!! ぱいぱぁぁぁぁぁい!!」


 バスティ王子たち乳同は、チムの姿が乳首ほどの大きさになるまで、何周も何周も乳で円を描いた。


 チムもまた、彼乳らが乳首毛ほどに見えなくなるまで、何周も何周も巨乳円を描いた。

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