第三章 カルボ王国

注在乳使〈前編〉

 カルボ王国の乳王の間は、プロティーン王国のものとは異なり、細かい乳細工の施された装飾が特徴的だ。壁に柱に、無数の美乳が彫られている。


 総勢三十谷ほどの美乳臣に囲まれながら、オリゴ乳王が前方に座っていた。

 その絢爛豪乳な景色に、バスティ王子は目を揉まれるような想いがした。


「よくぞカルボまでやってきてくれた。ビフィを連れてきてくれたことも含め、あらためて礼を言おう」


 部屋全体が眠気を呼ぶような甘い香りに満ちていた。その甘い香りの発生源は、オリゴ乳王の乳首に違いない。


 乳王の着ている金色の乳衣は、乳首の部分だけジットリと湿っていた。

 その胸元からは、まるで乳汁で爆ぜんばかりになっている美巨乳が覗いている。


「こちらこそ、乳厚い歓迎、真乳に感射いたします」


 乳守フェリンの返礼に、オリゴ乳王は満乳まんちちそうに乳を縦に振った。


「かつて両国には幾多の乳争にゅうそうがあったそうだが、この乳渡りの乳習によって乳和にゅうわな時期が何代にも渡って続いておる。お互いに乳を送り合い、今後も共に繁乳はんにゅうしようぞ」


「「乳意!」」


「さぁ、胸苦しい挨乳あいちちはこれまでにして、宴を始めるとしよう。サーモ! ブルガ!」


 昨日ビフィと抱き合っていた二谷の乳臣が、「乳意!」と乳王の前に乳まづき、両乳をパチンパチンと二度たたいた。


 すると、部屋の隅に立っていた大勢の乳官らが王子らの前に現れ、すみやかに飲台と座席を配置していった。


「どうぞ、お座りくださいませ」


 言われるがままに乳同が座ると、今度は次から次へと御乳走が運ばれてきて、飲台の上を埋め尽くしていった。


 生乳、冷乳、温乳、乳菜や乳果の汁物など、とても一夜では飲みきれないほどの乳量だった。


「今夜の乳宴は、明後日に行われる《授乳の儀》の前祝いだ。少ない乳しか出せないが、ちみたちに楽しんでもらえるよう、全汁を尽くしてもてなそう」


 乳王が乳をたたくと、踊り乳と歌い乳とが座席の両側からやってきた。


「「おっぱ! おっぱ! おっぱい! おっぱい――」」


 上下左右に揺れる美乳たちの乳踏に、王子の目は口付けになった。


「おっぱっぱ! 素晴らしい眺めじゃあ!」


 四天乳も乳拍子をうちながら、その胸快な旋律に同調した。


「綺麗な乳をしておりますね」

「我が国も見習わなくてはな」


 ゼインとルブミンが自らの乳房と見比べる中、オリゴ王が空の乳杯を手に持ちながら、四天乳の座っている席の前までやってきた。


「して、どの乳がわっちに乳杯を注いでくれるのじゃ?」

「それは、わちちが……」


 チムは立ち上がって乳衣を上に捲ると、左乳首を摘んで乳王の杯いっぱいにその乳汁を注いだ。


「ほほぅ、ちみが。名は何と申す?」

「リゾ・チムにございまする」


 オリゴ乳王は満たされた乳杯を受け取り、まずは鼻孔で乳汁の香りを楽しむと、それを一口に呑み干した。


「ふむ。先代に劣らぬ濃厚さだ」

「真乳に有り難き乳合わせ」


 王子はチムの胸元が赤くなっていくのを見逃さなかった。

 いくら乳位の高い乳王に対してとはいえ、ほとんど初対乳の者に乳汁を与えるとは。


「王子。乳が進んでおりませぬが、いかがなさいました?」


 隣にいたゼインの問いかけにも耳を貸さず、王子は両乳をプルプルと震わせた。



  ω ω ω



 飲めや揺らせやの乳宴が終わると、一同は乳殿の客間まで通された。広々とした室内の床には、一面に乳布団が敷かれている。

 詰め込めるだけ詰め込んだおかげで、王子らの乳房はパンパンに張っていた。


「あぁ、飲んだ飲んだ。乳合わせじゃあ」


 王子が乳房を乳布団の上で横にすると、薄手の乳衣に着替えたチムが乳桶を持って現れた。


「この国には、全身で乳汁に浸かる《乳浴にゅうよく》という乳習があるのですが、ご一緒にいかがでしょう?」

「行く!!」


 廊下を渡り、向かいの扉から外に出て、甘い匂いの乳の霧を抜けるとそこは乳浴場であった。

 円型の乳岩で囲まれた窪みの中に、初乳のように黄色がかった乳汁が溢れるまで注がれている。


 王子はおそるおそる乳面に口を付けると、唇が焼けるような痛みで飛び退いた。


「熱っ!! なんじゃ、この乳は!!」

「王子、これは飲むための乳ではございませぬ。こうして体ごと浸かるものでございます」


 チムの豊満な肉体が乳湯船にゅぶねに沈み込むと、中の乳汁が外に溢れ出た。

 王子もそれを見習いながら、乳湯船につま先から入ってみた。


「ふんっ……あぁああ!! なんじゃあ!! 乳持ち良いぞ!!」


 湯の中にチムの適乳が浮かんだ。

 冷たい夜風によって震えていた乳房が、みるみるうちに暖まっていく。


「これがカルボの乳浴でございまする」

「なんとまぁ、贅沢な乳遣いをしよる」


 しばし二谷は温かい乳汁の池に浸かりながら、乳親の胎内にいるような乳福感を味わった。

 まるで初めての授乳をする者のように二谷の乳房が赤く染まった頃、チムが王子に問いかけた。


「王子は四天乳の中で、どの乳が最もお好みでございまするか?」

「何を乳突に申すか」

「お答えいただきとぅございまする」


 王子は谷間に皺を寄せてるも、胸の中に思い浮かんだのは彼乳の美巨乳だった。


「そうじゃのぉ……やっぱり一番はフェリンじゃのぅ」

「フェリンは乳守ではございませぬか。そうではなく四天乳の中で、でございまする」


「うーむ、それならば……」

「それならば?」

「ゼインじゃのう」

「ゼインですか……」


 チムの乳房が一瞬だけ湯の下に沈み込み、また浮かび上がった。


「と、その次は?」

「その次はルブミン」

「では、その次は?」

「ロブリナ」

「ということは最も好みでない乳は?」

「チムじゃのぅ」

「わちちですか……」


 飲乳で大きくなっていたチムの適乳は、まるで百谷の赤子に吸い散らかされたかのように小さく萎んでしまった。


「いやしかし、チムからの授乳は好きじゃぞ! 腕や太腿がフワフワで、まるで乳雲に寝ているかのような心乳よさがある。それは他の乳にはない、そちだけの良さじゃ」


「有り難き乳合わせ」


 王子が体についた乳汁を拭いて客間へと戻ると、フェリンが乳を横にしている柔らかい乳布団の中に潜り込んだ。

 しかしフェリンは、一向に王子の目の前に乳を向けようとせず、自分の乳房を探ろうとした王子の手を振り払った。


「今夜は胸焼けがするので、一谷で寝とうございます。王子は他の乳とお眠りくださいませ」

「そんなぁ……」


 王子が予想もしていなかったフェリンの乳打ちに、驚きで乳を引き攣らせていると、隣の乳布団に入っていったチムが自分の方に乳招きしてきた。


「それでは今夜は、わちちとご一緒なさいまするか?」

「チムかぁ……」

「にゅふふ。そんなことおっしゃらずに」


 王子はフワフワに柔らかいチムの乳房を正面にし、揉んでも揉んでも飽きのこないチムの名乳を堪能した。


 そして乳灯が消え、揉む指が疲れてくるほどにチムの乳房をまさぐった頃、うつらうつらとしていた王子の耳に、貧なる声が聞こえてきた。


「ここで、お別れでございます……」


 その寝言は、頭の上の方から聞こえてきた。


「上の乳をお流しにならないでくださいまし……」


 耳を澄ませてみるも、やはりチムの声だった。


「王子とは、またいつか会えるのですから……」


 ここでお別れ? 上の乳? またいつか会える?


「……いったいチムは、何のことを言っておるのじゃ?」


 その夜、胸元が冷えるような想いに目が冴えてしまった王子は、チムの乳を揉みしだきながら朝を迎えた。

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