両親と逃げる

僕は父親の運転する車で、何者からか逃げている。


 小刻みな急カーブが続く峠道を、猛スピードで進む。左右に働く遠心力に体を揺られ、その度に窓から谷底の見えない霧がかった山間が見える。両親からは、何に追われているかは聞いていない。ただなんとなくスペースゴジラみたいなものを想像してドキドキしていた。


母「大丈夫だからね!」

父「絶対に大丈夫だ!」


 両親が揃ってこちらを振り向き、励ましてくる。それに頷きながら気付く。両親が外国人になっている。普通の日本人だったはずなのだけど。


 母親は、エスニックな黒人女性に。父親は、金髪の白人男性だ。


 なんでなんだろうと不思議に思っていると、両親だったその外国人たちがケタケタと笑い出す。その様子がとても恐ろしく、僕はドアを開き、車から飛び出した。その時、車の中の外国人達は喚いたように思う。


 ただ、外に飛び出した瞬間に天地の位置関係が逆転した為、直ぐに僕の周りはシンと静まり返った。地面があった場所には空を含む空間が広がり、空を含む空間があった場所には地面がギッシリと詰められた。


 僕の視界は完全に奪われ、全身が完全に地面に埋まっている状態だ。それでも追われている僕は逃げなくては行けないので、手探りで周りの地面を掘り進める。


 外国人になった両親の事を少し心配して、今後の事が不安になったりしたけど、傍らにミミズが居ることがわかって、なら大丈夫だと安心した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る