第22話

「う~む……写真を買った俺らが、撮るのをやめろとは言いにくいな……」


「まぁ、泉も買ってたし、少しくらい許してやれよ」


「そ、そんなぁ! 人ごとだと思って!!」


「「そりゃあ、人ごとだし」」


「二人とも……酷いよ……」


 声を揃えていう高志と優一に泉は肩を落として呟く。


「ちなみにどんなの撮ってたんだ?」


「あ、気になる気になる」


 高志と優一はそう言って、写真部の男子から撮影した写真を見せてもらう。

 写真は泉の横顔や笑った顔など、色々な表情の泉が撮影されていた。

 

「おぉ……流石だな」


「隠れててもこんなに良い写真を……」


「恥ずかしいから消してくれよ!」


「ダメだ! これは大切な商品だ!」


「盗撮でしょ!?」


 泉が怒っている隣で、高志と優一は写真を見続ける。

 すると、なぜか途中から高志の写真が写っていた。


「ん? なんで俺の写真が?」


「それも商品だ」


「俺の写真なんて誰が買うんだよ?」


「…………知らない方が良いこともあるぞ?」


「は?」


 写真部の男子は高志に尋ねられ、視線を反らす写真部の男子生徒。

 そんな写真部男子の様子が気になり、高志は更に尋ねる。


「どう言う意味だよ」


「……本当に知りたいか?」


「そこまで言われたら気になるよ」


「……とある男子生徒が定期的買っていくとしか言えない」


「はぁ!?」


「「男子!?」」


 写真部の男子生徒の言葉に三人は驚き、開いた口が塞がらなかった。


「おっと、これ以上は言えないぞ、うちのもっとうは顧客の個人情報を漏らさない事だからな」


「男子って……男子生徒か?」


「あぁ……今年に入ってからだな」


 優一は笑いを堪えながら、写真部の男子に尋ねる。

 高志は真っ青な顔をしながら、ぼーっと立ち尽くしていた。

 泉は気の毒そうな顔で高志を見ていた。


「た、高志……フフ……よ、よかったな……男にもお前はモテる……ら、らしいぞ……フフフ……」


「う、うるせぇよ……大体そいつが、俺目的って決まったわけじゃ……」


「いつもニヤニヤしながら買いにくるな」


「知りたく無かった事実を言わないでくれよ……」


 高志はその場に膝をついた。

 優一はそんな高志を見て笑い転げ、泉はそんな二人を顔を引き釣らせて見ていた。


「だから言っただろう?」


「あぁ……聞いた俺が馬鹿だった……」


「アハハ! 何ショック受けてんだよ! 告白されたら、ちゃんと答えてやれよ~」


「人ごとだと思いやがってぇ……」


「ちなみに、八重の写真を買うのはそいつだけだ」


「複数居たら、俺はもう学校に行かないよ……」


 衝撃的な事実を聞いた高志達は、写真部の男子生徒からこの事を秘密にする代わりに、代金の一部を返金してもらい別れた。

 高志はショックを受けながら、そのまま家に帰宅した。

 優一には散々笑われ、泉には哀れみの視線を向けられ、高志はがっくりと肩を落としていた。


「……ただいまぁ……」


「おかえり、高志」


「あぁ……紗弥……来てたんだ」


 高志を出迎えたのは、チャコを抱っこした紗弥だった。

 紗弥の方が帰宅が早かったようで、制服姿のままだった。


「どうしたの? 元気無い?」


「にゃ~?」


 元気の無い高志を心配する紗弥。

 そんな紗弥に高志は癒やされていた。

 元気が無いと心配してくれる、そんな出来た彼女に高志は感動を覚える。


「俺、紗弥が彼女で良かったよ……」


「え!? きゅ、急にどうしたの?」


 高志は紗弥の手を握ってそう言い、紗弥は思わず顔を赤く染める。

 チャコは高志の心情を察したのか、床に飛び降り、高志の足に顔を擦る。


「紗弥! 俺絶対に男と浮気なんてしないから!! 絶対だから!!」


「きゅ、急にどうしたの? 本当に変だよ?」


「気にしないでくれ!」


「?」







 修学旅行の前日、高志達二年生は午前中で学校が終わった。

 高志と優一、そして泉は必要な物を買いに大型のデパートに来ていた。


「高志、あとは何買っていくよ?」


「別に無いだろ? さっさと帰って明日に備えようぜ」


 買い物も終わり帰宅しようとしていた三人。

 いよいよ、明日から修学旅行が始まる。

 自然とテンションは上がり、話題は修学旅行の話題ばかりだった。


「うちの母親が八つ橋買ってこいってうるせぇんだよ」


「定番のお土産じゃない? 別に難しい頼みじゃないし」


「いや、店まで指定してくるんだよ。しかも人気店」


「あぁ、それは大変だね」


「しかも、秋村まで面倒なお土産を要求して来やがって……」


 不服そうにそう呟くのは優一だった。

 そんな優一の話を高志と泉は歩きながら聞く。


「何を要求されたんだ?」


「俺の愛だと」


「あぁ、愛されてるもねぇ~」


「惚気なら他所でやってくれよ」


「高志、お前にだけは絶対言われたくない」


 肩を落としため息を吐く優一。

 文句を言いつつも、そんな芹那の願いを真剣に考えている優一に、高志も泉も思わず顔がニヤける。


「な、なんだよ……お前らニヤニヤして……」


「いや、もう少しお前が素直なら、芹那ちゃんも苦労しないだろうと思っただけだよ」


「はぁ?」


 そんな話しをしつつ三人は駅前に到着した。


「それじゃ、俺は電車だから」


「僕も電車だから、じゃあね優一」


「おう、また明日な」


「寝坊すんなよ?」


「しねーよ、じゃあな」


 優一は二人に別れを告げて自分の家に帰って行く。

 優一の家はマンションの五階だった。

 いつものようにオートロックを解除し、マンションの中に入り、自分の家に向かう。


「ただいまぁ~」


 高志は家の鍵を空け、家に帰宅した。


「まぁ……誰のいねーけど」


 家の中は真っ暗で誰も居ない、それと言うのも優一の家は母子家庭であり、母親は土日くらいにしか家に帰って来ない。

 優一はいつものように鞄を部屋に置き、着替えを始める。

 そんな時、インターホンの音が部屋に鳴り響いた。


「誰だ?」


 時間は午後三時を過ぎていた。

 優一はワイシャツ姿でインターホンを覗く。

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