ドラゴン

阿部亮平

第1話 蕪畑

 突き当りを左に曲がると、一反歩程の小さな蕪畑にぶつかる。

その尾根伝いのでこぼこ道を左に沿って走ると、三方を建売住宅に囲まれてぽつんと一軒だけ小さな農家が建っている。

通り沿いの畑はすべて売られ、今ではほぼ不動産業者によって開発しつくされており、建売住宅だらけになっている。


この蕪畑も例外ではなかった。


 中谷は暗がりの中、バイクにまたがったまま足を地面につけて、胸ポケットからタバコを取り出し火をつけた。

そして、目の前の白い立て看板をじっと見つめた。


 『建築のご案内 

 施主 松丸不動産

 設計者 岡島建設 着工平成八年三月末日

 竣工平成八年八月末日」

 中谷はタバコの煙を深く吸い込むと、もうじき取り壊される農家の方に目を向けてみた。


 玄関の方を目を凝らして見ると、あの爺さんの姿が中谷の目の前にぼんやりと浮かんでくる。

爺さんは中谷の方に向かって手を振ると、畑の尾根伝いのでこぼこ道をよろよろと杖を突きながら歩いてきた。


 中谷は爺さんが近づいてくるのをじっと待った。


「おお、やっぱり君かね。元気でやっているかね」

「ええ、まあ、、、、、」


 中谷は煙草を地面に捨てると足でもみ消した。

一息、大きなため息をつくと、バイクのエンジンを切ってから爺さんに向かって、この一年間に起きた事柄を話し始めた。




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