13

 家に着くまで、智則は何も言わなかった。


 圭司が自室に逃げるようにして駆け込む前に「ごめんな」とだけ言っただけ。


 圭司は、部屋の電気をつけることさえせずに、ベッドに倒れたこむ。別に、父に嫌味を言いたかった訳じゃない。どうしてそんなこと言ったのか、自分でも分からなかった。


 暫くして、部活の疲れが足を襲う。ジンジンとふくらはぎから太ももまで。


「疲れた」


 体に心が戻った。枕の汗じみが、すぐ目の前に見える。

 そして思い出した! 疲労感も投げ捨てて起き上がり、暗闇のなかで机の上にあった数学のノートを探した。


「あった……」


 電気をつけた方がよく見えるのに、そうしなかったのは夜眼がきいてきたのか、それともからなのか。


――おとうさんとお母さんに


 ノートの余白に書いた、圭司の質問「誰に殺されたの?」のすぐ下に、その文字はあった。


 お化けからの返事。

 か弱くも整った文字は、自分を殺した犯人を告げた。しかし、その言葉には、いったいどんな秘密が隠されているのだろうか。




「第三章」へつづく――

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