第13話 絶壁神が俺の前に降臨なされた

 正直少し甘かったと思うべきだ

 あれから数十分は経っているがまだファフニールはここにいない

 犬耳族は先ほどから必死に人間族と交戦しておりアルネシアが加勢し何とか耐えている状況だ 

 でも向こうには回復魔法が使えるものがいる、魔力がなくなるまでとは考えない方がいいだろう、どの道、回復魔法が使えるあいつを早く何とかしないといけないだろう

 一方その頃俺は何もすることがなくただじっととしていた


 ボクイマヒマデス


 というのも俺は魔法が使えないので戦力にはなりえない

 俺には魔力がないらしい、聞いたときはがっかりもしたもんだがまあ俺はこの世界の人間ではないし納得している

 近接戦闘もまあ期待しないでくれ

 俺は万年帰宅部で家に帰ったら即ゲームをしていた人間だ

 こんなことなら剣道部に入っておけばと思うこともあるが今更嘆いたところで変わることもないだろう

 なので俺はファフニールがここに来るまでお留守番というわけだ

 あの後も何回も呼んでみた、しかしファフニールは来てくれなかった

 聞いていた話と違うので俺も内心戸惑っている

 あいつは強く念じ叫んだら来ると言っていたのだ

 何か足りないのだろうか

 考えてみる、足りないものか

 愛?

 最初に思い付いたが違うと思う

 最初に俺がファフニールを呼んだ時、思っていたことは後悔と懺悔の気持ちだ

 ではなんだ

 勇気?

 なんだ勇気って、俺がまるでファフニールを呼ぶことにおびえているみたいじゃないか、そんなことないんだからね

 愛と勇気?

 なるほどこれさえあれば確かに安心だよね!

 きっとどこかのばい菌王だって正義の鉄拳で何とかしてくれるはずさ

 うんないわ

 結局答えなんて出ずに俺はただ戦闘を見ているしかないのだった

 しかしアルネシアがここまで強いとは思っていなかった

 俺は相手の強さなんてわからないが冒険者風の人間を複数人相手にしても負ける気配がない、相手の攻撃をかわし追撃、後ろに控えていた敵も魔法により撃墜

 魔法と近接戦闘、両方高い実力を持ち、耳による状況把握能力がありまず負けることはないだろう

 犬耳族は何というか脳筋な気がしてならない、エルフ族が技術を大切にするなら向こうは力でごり押しするタイプだろう

 動きを見たら大ぶりな攻撃が多く隙が多そうに見える

 そのせいで無駄な傷を受けている印象だ

 まあ口出しするほどでもないだろう

 しかし時間が勿体ない、ただじっとしていても意味がない

 さてそろそろ行動に出るべきだろう

 暇だしな


「アルネシア様、僕は逆転の一手を見つけてきます」


「ちょっと!! 何よ急に!!」


 まあ慌てるのは仕方ないことか逃げ出すとでも思われているんだろうな

 心配ないさ俺の心はすでに君に絶対服従なのさ

 だって君専用の奴隷だからね


「死にたくないなら耐えてください、大丈夫戻ってきます、あと一つ、回復魔法を使えるものを何とかして倒しておいた方がいいですよ」


 そう言い残し俺は踵を返し走り出した


 村の中は静かだ誰もいないようだ家を確認しても誰もいない

 いま俺の周りには誰もいないのを確認した

 目の前には女性用衣類が入っていると確認したタンスがあった

 後はわかるな兄弟、俺は行く

 やめて! 兄さんまだ遅くない、戻ってきて!

 止めるな弟よ、俺の一歩前には楽園エデンが待っているんだ

 誰か、兄さんを......


「なにしてるのよ」


(誰だ! 俺の邪魔をする馬鹿な奴は!)


 振り返るとそこにいたのは言わずとも知れた僕のご主人様でした

 なぜここに? と言いたい気持ちはありましたがご主人様の顔を見て考えを改めました

 はい僕は間違いを犯したのです

 罪を認め崇める覚悟をもってご主人様に謝りました

 土下座です


「間違いを犯したのは認めます、しかし後悔はありませ、ぐはっ!!」


 見事な一撃でした

 彼女の蹴撃により3回転はしたでしょうか、その後漫画のように壁を破壊して外に放り出されました

 体からは血が大量に流れだし、死ぬかもしれません

 さようなら


「はぁ、本当にバカみたい」


 彼女は右手をかざし唱えた


「癒しの神よ、我力を欲す、この者に癒しの奇跡を」


 何度も見た回復魔法

 傷口がふさがり打撲等も治り一命をとりとめた


「すみませんでした」


「これで何度目?」


 彼女は怒っていた

 それはもうかんかんだ

 虫を見るような目でございます


「23回目でございます」


 今日が初めてというわけではなかった、そのことにご主人様は怒っているようです

 でも仕方ないじゃん男ならやるでしょ


「今度やったらただじゃ置かないって言ったの覚えているわよね?」


「もちろんでございます」


 忘れるわけもない、何回ばれたことかそのたびに殴られている


「はぁ、次やったら今度は殺すわよ」


「は、はい」


 俺はアルネシアに誓う

 今度は絶対にばれないようにすると

 


「で、あんたは結局下着を探すために私のもとから離れたの?」


 殺気から目線が痛い

 今ならネズミの気持ちがわかるよ

 とりあえず首を横に振っておく

 間違って何かを話したりしたら何されるかわからない

 ご主人様はご立腹なのだ

 これ以上ことを荒げても何の意味もない

 怒りが落ち着くのをじっと待つ、俺が今できることはそれだけだ


「とりあえず、信じておくわ」


 おお神よ、ここにいたのですね

 すこし胸が小さい気がしますが何かの間違いであると思います

 しかしその体からあふれ出る神々しさまさに神、絶壁神

 一生お供します、アーメン

 俺が手を合わせ拝んでいると彼女は頭を踏んできた


「あんた、またいやらしいこと考えてるでしょ」


 まさか、神の出現に喜んでいただけですよ

 痛い痛いぐりぐりしないで


「痛いです、アルネシア様」


「あんたがそうゆう性格なのは知ってるけど今やるべきことでないことは知っているでしょ」


 僕の事を理解してくれていてうれしいですよ

 でも理解してるならもうちょっと優しくしてくれても罰は当たらないと思うんですけど......


「そうですね、すみませんでした、アルネシア様はなぜここに?」


「あんたが言ったとおりにしたら何とかなったわ、だからあんたを探しに来たってわけ」


 あ、なんとかなったのか

 回復役がいなくなるだけ崩れるということは冒険者風のあいつらはそこまで強くなかったてことかアルネシアがつよかったこともあるかもしれないが


「では、問題は解決ということで?」


「そうね、でも一つ、問題があるわ」


 まさか、ばれたのか、いやさすがにそれはないはずだ 


「彼らが私たちに協力的ではないのよ」


「そ、そうなんですか」


(なんだそんなことか、よかったとかった、え? 今なんて言った? 犬耳族は俺たちに協力できないと聞こえたが)


 アルネシアの顔を見る限り嘘ではないらしい

 なら何がいけなかったんだ、俺たちは実質命の恩人だろ


「なんでですか? 理由は分かっているのですか?」


「わからないわ、だからあなたを呼びに来たのよ」


 ああ、詳しくは聞いてないのね

 律儀なことで、そうゆうことなら俺の出番だ

 話し合いなら俺に任せろ! どんと構えておけよ


「では行きましょうか」


 俺が立ち上がり向かおうとしたとき


「お座り」


「ワン」


 え? いやなんで

 ふざけてるの? ちょっとどこ触ってるのやめて

 そこはだめだ! やめてください

 ああ! 


「これは何?」


 俺の服のポケットから出てきたのは白い布だった

 アルネシアは鋭い目線を向けながらそれを目の前で広げた


「これ、下着よね? 後は分かるわね?」


「あはは、これはやられちゃった☆」


「死ね」


 その後、許してもらうのに彼は三度死にかけた(本当)

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る