二十年 七月 「西瓜」

 俳句生活に投句するようになって一年以上経ち、この回はなにか吹っ切れた気分でした。西瓜で何を吹っ切るのか、説明するのは難しいのですが、自分の中で季語からストーリーを作るコツがつかめた気がしました。私の場合、その情景を想像して、写真を撮るように俳句を作る。という流れで俳句を考えていきます。相変わらずの「一物仕立」になりがちなんですが、本人の中では「取り合わせ」の二物衝撃が渦巻き始めていています。



 ばあちゃんは出刃包丁で西瓜切る


 ウチのばあちゃんは何でも出刃包丁を持ち出すんですが、それが見るからに恐ろしくて「恐い」というとニッヒッヒって笑うの。スパーンって切れるときの手応えが良いらしい。まあ西瓜なら出刃包丁でもいいんだけど、桃でも柿でもトマトでも出刃包丁。ボツだったのは季語の西瓜よりも、ウチのばあちゃんに焦点が行ってしまったからだと思われます。



 コツコツとカラス西瓜の品定め


 畑でね、出荷前の西瓜をカラスがつつくんですよ。迷惑ですよ。追い払ってもまた来るし「熟れたかなあ?」って顔してコツコツやられると、じいちゃんもメンタルやられるって嘆いてました。最近はカラス除けのネットを張るのが主流だそうです。今度も敗因は季語の西瓜ではなく、カラスに持って行かれたせいかと思われます。



 ☆☆ 月に雲熟れた西瓜のぜる音


 闇夜の西瓜が爆発します。秋の季語の月も雲で隠したから問題ありません。今夜は早い風にのって流れる雲が幾度も月の面を隠します。月光が届かない畑の隅では、熟れに熟れた西瓜の爆ぜる密かな音が、闇夜の一瞬の静寂を破るのでした。この句は「人」に入選しました。



 (今日のおすすめ本)


「すごすぎる天気の図鑑」荒木健太郎<KADOKAWA>


 俳句といえば自然現象は一通り押さえておきたいですからね。この本は雲や虹や風について詳しく楽しそうに解説しています。誰かが楽しそうに話していると、つい聴きいってしまいますが、荒木先生は天気大好きな人なんだなとよくわかりました。

                               つづく

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